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サービスデザインスプリントで組織内コミュニケーションを円滑に

   

組織内コミュニケーションは、4日間のデザインスプリントでどう円滑になっていくのか?

この記事では問題解決を行うワークショップ、サービスデザインスプリントの応用例についてお伝えします。デザインスプリントについて耳にしたことがない、という方はぜひこちらの記事も併せてご覧ください。

2017年。ニューロマジックが日本でデザインスプリントを提供し始めてから間もない頃、株式会社東芝さまよりこんな連絡をいただきました。

デザインスプリントは、異なる部署間のコミュニケーション向上に有効でしょうか?

サービスデザインやデザイン思考のメソッドは、2000年代初頭から世界中の組織で活用されてきました。

組織は大きければ大きいほど、効率性を最大化させるために機能が分別され、サイロ化されています。言い換えれば、デザイナーはデザインの仕事だけして、コーダーはコードだけ書いて、営業は営業だけをやって…といった感じです。

ですから大企業で働き方を変えていくのは簡単でないわけですが、とるべき最初のプロセスは、相互理解を生み、プロジェクトを行う際の新しいアプローチを学ぶことです。このような一歩を踏み出すのに適しているのが、ニューロマジックの提供している手法、サービスデザインスプリントです。部門間のコミュニケーションを向上をさせたいという相談を寄せてくださった東芝さまに、私たちはサービスデザインスプリントを提供することにしました。この記事では、そのプロジェクトの様子についてご紹介します。

そもそもサービスデザインスプリントとは?

サービスデザインスプリントとは、サービスやプロダクトの改善、開発において対処すべき問題、あるいは組織内の問題に対する解決法を創出するワークショップ方式の手法です。ユーザーインタビューをもとに問題を定義し、解決法のアイデア創出と検証まで行うプロセスが含まれています。多くの組織では問題に対処する際定量データにのみ頼りがちですが、サービスデザインスプリントではきちんとユーザーへの理解を深めるプロセスを経てから、その解決に向かうことができます。

具体的にユーザーへの理解を深めるアクティビティとして、ペルソナやカスタマージャーニーを作成するというアクティビティがあります。こうしたプロセスを関係者が共に取り組むことで、全員がユーザーを深く理解し、同じ認識をもった上でソリューション創出へと取り掛かることができます。デザインスプリントは、チームが共通のゴールに向かって共通認識をもち、新しい計画に取り掛かり、正しい筋道で進んでいけるように設計されているのです。

サービスデザインスプリントは、(GVデザインスプリントと比べ)より包括的なアプローチで、ユーザーリサーチにも注力しています。サービスデザインスプリントはプロジェクトのキックスタート等にも適していて、幅広いソリューションへと導いてくれる可能性を持っているのも特徴の1つです(GVデザインスプリントとサービスデザインスプリントの比較についてはこちら)。

サービスデザインスプリントの起源についてもっと知りたいという方は、サービスデザインスプリント開発者であるTenny Pinheiroへのインタビューをこちらからご覧いただけます。

どんな状況に適しているのか

さて、ここまでサービスデザインスプリントそのものについて少しご理解いただけたかと思いますが、実際にどのような場面で応用すれば良いのかわからない、とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

サービスデザインスプリントは、まだ対処したい課題が漠然としている場合や、最重要課題が何かを定めてから解決方法を考え出したいという際に便利なワークショップです。デザインスプリントのプロセスを踏んで行く中で、ステークホルダーは互いに理解を深めることができる上、今後対処していく上での明確なビジョンを共有することができます。

通常ニューロマジックでは、サービスデザインスプリントのエクササイズに、プロダクトデザインスプリントやその他のメソドロジーの要素を加え、クライアントの抱えている課題や二ーズに合わせてカスタマイズしたデザインスプリントを提供しています。

しかし、先ほどご紹介した部署間コミュニケーションを扱うプロジェクトにおいては、本来のサービスデザインスプリントのプロセスをそのまま実施することにしました。このプロジェクトでは多くのステークホルダーが関与していたことに加え、そのステークホルダーたちがお互いを理解し合いながら、どんな課題に直面しているかについての合意形成を行い、その原因と解決策を見つけ出さなければならなかったからです。こうした状況においては、サービスデザインスプリントが適していると判断しました。サービスデザインスプリントは、共感を促すユーザーリサーチのフェーズや、お互いに聞く耳を持つようにメンバーを導いてくれる共創プロセスから成っているからです。

では、ここからはもっと詳しく、東芝さまのプロジェクトでとったプロセスについてお話しします。このプロジェクトでは組織内コミュニケーション向上が課題であったため、ここでの「ユーザー」とは、2つの異なる部署それぞれの社員を指します。お互いの部署に対する理解を深めるプロセスを通して、改善のためのアイデア創出と検証まで行いました。

1日6時間で4日間。チームは課題を絞り込み、デプスインタビューを実施。ペルソナ、ジャーニーを作成したのちに、アイデア創出とプロトタイプ制作、検証まで行いました。

1日目 ペルソナ作成と課題の再定義

このプロジェクトでは時間が限られていたため、デザインスプリントに参加してもらうステークホルダーに、事前にメールでアンケートを送信し、回答してもらいました。この回答はデザインスプリントの中で会話のタネとして使われ、どのようにして部署間での連携が行われていたのか、またそれがどのように認識されていたのかをよりよく理解するきっかけとなりました。議論の後には、2つの部署に所属する社員それぞれのペルソナを作成し、デザインスプリントで取り組む課題の再定義を行って終了しました。

2日目 ペインポイントを可視化する

各ペルソナのジャーニーを作成してからそれらを一緒に並べ、数ヶ月間にわたるプロジェクトの異なるフェーズの中で、いつ、どのようにして共に働いていたのかを可視化しました。このジャーニーマップから、問題となっている箇所、共創をする際に向上できる箇所(ペインポイント)を特定しました。

3日目 アイディエーション

3日目では前日に特定したペインポイントに注目し、チームは2ラウンドにわたるアイディエーションセッションで、40以上のソリューションを考え出しました。このプロジェクトでは時間に制限があったため、意思決定者にはプロトタイプへと移すアイデアを1つだけ選んでもらいました。

4日目 プロトタイピングと検証

プロトタイプ制作のために採用されたアイデアは、プロジェクトの特定のタイミングで問題になり得ることを特定し、お互いの協力を促すミーティングを実施する、というものでした。そこで、参加者はスライドと資料を作成して、ミーティングがどのようにして行われるかのリハーサル(=プロトタイプ)を実施。このミーティングはマネージャー陣も交えて行われ、実際にどんなことはきちんと機能しそうで、どんなことがうまく行かない可能性があるかというフィードバックももらうことができました。1日の最後には、プロトタイプの実行まで至らなかった他のアイデアに対し、参加者全員が時間、コスト、関心度の3つの観点で評価をして終了としました。


サービスデザインスプリントでは多くの定性データや有用なインサイトを得て、短時間で「人」に関連した問題に対処することができます。チームや企業がプロジェクトを発足させる際、時間とお金をかける前に、どんな方向に進むべきか、具体的な気づきを得るのにも役立つ手法ですよ。

この事例の詳細は弊社の事例紹介ページでも掲載されています。
是非ご覧ください: https://www.neuromagic.com/works/toshiba/

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