自社サービスを改善するとき、最初にどんなアクションを起こしますか?まずはサービスのユーザーについて知ろうとするのではないでしょうか。ユーザーを理解する際にもってこいなのが、サービスデザインの手法です。
本ブログでは、弊社がサービスデザインを用いて株式会社ユナイテッドアローズ様の採用サイトを改善した事例をご紹介します。
サイトの訪問者であるユーザーをどのようなプロセスで理解し、何を発見したのでしょうか?インターン生のシンから、サービスデザイナーの永井にインタビューをしながら紐解きます。
プロジェクトの概要:働く場所としてのユナイテッドアローズ
株式会社ユナイテッドアローズの人事採用戦略パートナーとして業務を担当。プロジェクトのメインとなったのは「採用Webサイトの全面リニューアル」。
リサーチからコンセプト策定、実装までを担当し、求職者にとって重要なタッチポイントとなる採用サイトのUI/UX改善、伴うコンテンツの拡充を行いました。
当初の課題は以下の2点:
- 店舗のブランドイメージは定着しているものの、「働く場所」としてのユナイテッドアローズが求職者に伝わっていない
- 他業界からファッション業界を志望する人を増やし、今後の事業を牽引できるような人材を獲得したい
そこで弊社はIBR調査とワークショップを提供し、現状の整理とユーザーターゲットの共通言語化をサポート。この二つの手法について、インターン生のシンが深堀していきます!
IBR調査 ー 課題をデータで証明
概要:「就職先としてアパレル企業に関心がある/関心があった」大学生3-4年生を対象に、IBR(消費者情報行動調査)を実施、就職に関する意識や就職活動に関する情報行動を調査。特に就職活動において重要視する情報、働く場所としてのアパレル企業のイメージなどのデータを収集。

シン:調査を行ってよかったと感じる点はありますか?
永井:クライアント様が認識している課題「働く場所としてのイメージが湧かない」ことをデータで理解できたことです。自分がお店に赴いたときの顧客体験が、企業のイメージを形成していることが調査で証明されました。
またこの調査結果を通じて、学生が株式会社ユナイテッドアローズにどのようなイメージを抱いているのかも認識できました。そのため、ウェブサイトで何を補い、何を強みとして伸ばせば良いのか、クライアントの担当者様と共通言語化できたことが非常によかったです。
シン:具体的に、何か発見したことはありますか?
永井:調査票を作る時、アパレル志望の学生の性格や行動を知りたいと考え、そういった傾向を掴むための調査項目を盛り込みました。それによって、就職活動に対する積極性、自己評価の高低、男女の差などが浮き彫りになりました。
いわゆるゼット世代、ミレニアル世代のことを分析した記事はいろいろありますが、本調査は違う世代を捉えるときに私たち大人が持ってしまいがちな変な先入観や固定観念を取っ払ってくれる、とても良い発見をもたらしてくれました…!
ワークショップ ー 定性的な情報も組み合わせ、ターゲット像を明確に
概要:上記の調査結果や日々の採用活動での視座をもとに、求職者のペルソナとカスタマージャーニーマップを作成するワークショップを開催。ユーザー像をより具体的に共通言語化することが目的。

シン:ワークショップを行ってよかったと感じる点はありますか?
永井:今回は一緒にワークショップをやってくださったユナイテッドアローズの皆さまは、直に学生さんと向き合っているエキスパート。彼らと一緒に作業することで、就活生の現状が更にクリアになりました。
最初に取ったIBR調査の結果と、皆さんが実体験から掴んだ学生像をうまく組み合わせられたのがとても良かったです。
シン:ペルソナの作成についてお聞きしたいです!
永井:今回は、今後特に採用していきたい人物像についてペルソナを作成しました。本件に限らずですが、イメージできている!と思った人物像でも、具体化していくとメンバーごとに全然違う人たちを思い描いていたりします。
サイトでのアプローチ方法を考えるためにも、まずターゲット像を明確にすることは本件でも重要でした。
シン:カスタマージャーニーマップの作成では何か発見はありましたか?
永井:カスタマージャーニーマップを作りながら認識できたのは、やはり就活生は「自分の興味分野や能力に迷いを持ちながら面接受ける」ということです。
IBR調査の結果から、焦りや迷いからか多くの学生が就職活動の早い段階でインターンに参加しているという事実がわかっていました。そのためカスタマージャーニーマップの作成を通じ、いつどんなことに学生が悩みそうかを整理しました。
少しでもその悩みや迷いに寄り添えるサイトにするために、クライアント様の体験談も踏まえてカスタマージャーニーマップを作成できたことはサイト制作に大いに役立ちました。
サイト制作への生かし方 ー サービスデザインはコンテンツの方針決定にも役立つ
概要:本件では上記の調査やワークショップのち、情報設計やデザイン、そして開発などの制作フェーズへ。

シン:上記二つの手法から得た結果が、どの面でサイト制作に生かされのかもっと知りたいです!
永井:調査やワークショップを経て、就活生は①職種や仕事内容、どんな人が活躍しているのか、②福利厚生、といった情報を重視しているいうことが検証されました。そのため、それらの情報をきちんと提示していくという方向性に決まりました。
シン:社員インタビューは結構充実したコンテンツとなっていますね!
永井:提案の段階でも、「具体的な従業員の道が見えた方が良いので、従業員インタビューを追加しましょう」と言う話は出ていました。
コンテンツとしては定番ですが、調査やワークショップを行ったことで、学生がどう悩んでるか、どんな不安を持ってるか、をより理解していました。そのため、記事の内容まで工夫を凝らすことができたと思います。
共創が生んだクライアントとの一体感
シン:サイト制作において、他にサービスデザインのアプローチが生かされたと思う点はありますか?
永井:そうですね。本件は冬に発足し、春の就活シーズンに間に合わせる必要がありました。時間がない中でも、クライアント様と一緒に調査・ワークショップ行ったおかげで、早い段階で一つのチームになれたと感じます。
一緒にデータを見たり、ユーザー像を探求したことで、共創のプロセスを踏む機会ができました。サービスデザインが得意とする様々な立場の人を巻き込む能力が、サイト制作のスピード感を保証できたのではないでしょうか。
また今回は「サイトを作る」というお題で声をかけていただきましたが、私たちは「採用のパートナーになる」という解釈でお仕事を請け負っていました。
サービスデザインは元来、「サイト」という一つの接点だけでなく、企業説明会や学校に置くパンフレット、口コミサイトなどなど…、サービス全体を俯瞰的に捉える分野です。
そのため本件で得た情報は、クライアント様にとって他の施策にも応用できるものになったのではと思っています。
サービスデザイナーとして
シン:最後に、改めて本件への思いを聞かせてください!
永井:学生時代、アパレルでアルバイトをしていました。経験があるからこそ思うのが、とても価値のあるお仕事なのに、接客サービスということで社会的地位が低かったり、裏方の様々な職種もあまり知られていなかったり…
そして実は、私自身ユナイテッドアローズ様のお洋服が大好きで、お客さんとしてよくお買い物させていただいていたんです(笑)。そこでいつも対応してくださるある店員さんがいらっしゃるのですが、お店で接客をしていただくたびに「また明日から頑張って!」と背中を押されるような、そんな素敵な時間を毎回いただいていたんです。
なので本件を通して、ユナイテッドアローズ様の魅力、そしてアパレル企業で働くことの意味や社会的価値を少しでも多くの求職者の方々にお伝えできていたら嬉しいです。
シン:永井さんの熱い思いが伝わってきました。ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか?
ユナイテッドアローズ様の人材採用に関するリブランディングについて、弊社の事例紹介ページでも掲載されています。
是非ご覧ください: https://www.neuromagic.com/works/united-arrows/

