UXディレクターへ求めること
「UX」が耳慣れた言葉になって次第に明らかになってきていることですが、UXデザインを前提としたWebやシステムをめぐる技術の体系というものは、思いのほか広範な技術的専門領域をまたがっている、ということがあります。
人間工学と人間中心主義設計を出自にもつUXデザインをつきつめていくことが、今後は人文科学や情報科学が標榜する「人間」理解へのスタンスへも接近していくことになりそうです。
昨今の実際の事例におけるアウトプット品質のレベルは相対的には高まっている傾向を感じつつ、このような複数の専門性を求められる状況によって、あるべき理想を体現することへの要求水準もまた、さらに上昇している状況といってよいかと思います。
「ディレクター」はアウトプット品質を担保する番人であるべきです。そのポジションはやさしいものではないでしょう。
さて、しかし、UXディレクターはこの状況を喜ぶべきです。何故か?
理由その1:活躍のチャンスが増えました
UXディレクターにとっては、本質に向き合った仕事をするチャンスがかつてよりも増えていることは確かです。
- スマートフォンの普及によって、常時インターネットと接続した生活を送るようになった人々にとって、デバイス体験は良くも悪くも、これまで以上に人生の重要な部分と不可分となる時代が到来しました。
- Uber/AirBnBといった企業とアプリケーションが「破壊的イノベーション」という言葉とともに「UI/UX」の認知・理解を推し進めました。
- 経済産業省は2020年に「我が国におけるサービスデザインの効果的な導⼊及び実践の 在り⽅に関する調査研究報告書」を公表しました。サービスデザインの隆盛は、UXデザインにとって幸福なことであったといってよいでしょう。サービス・ドミナント・ロジックの理解が広がることは、得意先の都合ではないユーザー視点のソリューションの実現を後押ししてくれるものです。
- コロナ禍により、多くの企業が半ば強制されることになったリモートワークは、予期されなかった形での気づきを生み、人々の生活におけるUI/UXの重要性を跳ね上げることになりました。
UXデザインの実践がかつてより本質的に求められ、その威力を発揮しやすい時代が到来しつつあります。
理由その2:問題がわかれば、あとは解くだけです
「UX」と「デザイン」について、多くのことが明らかになった結果、相当に曖昧模糊とした時代の霧が晴れつつあります。つまり、課題が明確になってきているということです。何をめざしてどのように努力すべきか、クリアになってきているわけです。難解さと困難さを実感して恐れることは、目指すべきゴールの片りんが見えていることの証左ともいえます。
複数ドメインのスキルに長じることを面白がること、ひとつ長じたスキルを獲得していくことを楽しむこと、それらのバランスをみつつ、自分を磨いていく努力ができること、前人未到の新しい方法やプロセスを模索していけること、そのようなスタンスの人材が求められます。わくわくしませんか?
ビビりながら、レッツ、チャレンジ!ニューロマジックは、このような状況で探求と実践を楽しむUXディレクターを求めています。
複数領域にドメインをもつプレイヤー集団を目指して
Takram代表の田川欣哉氏が提唱している「BTC型人材」という言葉があります。これはBusiness/Technology/Creative の専門的手法や技術を同時に体得し、それぞれの領域を橋渡しできるような人材で、イノベーションを加速する人材像として紹介されています。
このような人材を指す言葉が強調される背景にあるのは「スキルは足し算ではない」という事実です。複数のかけ離れた専門的スキルを同時に獲得し、越境するプレイヤーは、他では気づけなったアイデアやブレイクスルーを生みだす可能性があります。
ニューロマジックは、UXディレクターに限らず、複数ドメインで長じたプレイヤーとコラボレートすることで生産性を上げていく組織を目指します。設計とエンジニアリングにまで長じたバックエンドUIデザイナーや、デザインとエンジニアリングの両方に長じたデザインエンジニア、UXデザインやOOUIを体得したUXエンジニア、等等。
風呂敷を広げるエンディングとなりますが、こうしたプレイヤーが相互にフォローし合い、切磋琢磨しながら、プロジェクトの先頭で縦横無尽に活躍する未来を目指していきたいと考えています。
グループや組織の垣根を越えて、共感していただける諸氏の賛同と参戦希望の声をお待ちしています。
(前編はこちら)

飯川光明
UXディレクター
サービスデザインを通した課題解決の手段がデジタルプラットフォームであった場合の、UI/UX視点の手法導入、プロジェクトのプロセス提案とディレクションを担当。
