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リモートワークショップ成功の秘訣 <準備編>

   

COVID-19のパンデミックが起きてから時は経ち、リモートワークが当たり前になってはや半年以上。ワークショップと言えば対面で行うのが当たり前でしたが、今やオンラインで行うのが当たり前に。これからワークショップを自社でやってみたいけど、リモートでワークショップを行うにはどんなことに気をつけたらいいの?これまで対面のワークショップしかやったことがなかったけど、リモートではどんなことを準備しなければならないのかわからない、といった皆さんの疑問にお答えします。

この記事ではリモートでワークショップを準備する際に気をつけるべき、とても基礎的なポイントをお伝えします。この記事は、以下のような方におすすめです。

  • これからリモートワークショップに初挑戦するという方
  • リモートでワークショップを行ったが、あまりうまくいかなかったといった方
  • リモートワークショップをやったことがあり、もっと円滑に進行できるようになりたいという方

リモートでワークショップを行うには対面のワークショップと違い、どのような準備が必要になるのでしょうか?ここでは6つだけ基本的なポイントに絞ってご紹介します。

目次

  1. 参加者の決定
  2. 使用ツールの選定
  3. キャンバスの作成
  4. 実施環境の確認
  5. オンラインツール使用の練習
  6. タイムライン設計

1. 参加者の決定

リモートワークショップでは、参加者は多くなりすぎないようにしましょう。お勧めは参加者5名、ファシリテーター1名、テクニカルサポート1名です。

リモートワークショップではビデオ会議ツールでグループに分けるセッションを使用し、複数グループのファシリテーションを同時に行うことも物理的には可能です。しかし参加者全員がきちんとアクティビティの内容についていけているか、またテクニカル面で困っている人はいないかなどを確認するのは非常に難しくなってしまいます。参加者全員の様子を伺いながら、きちんと成果が出るようにするためには可能な限り1グループのみで実施し、極力複数グループのファシリテーションを同時に行うのは避けましょう。

また、リモートワークショップではオンラインツールの操作や、何かテクニカルな問題が起きたときに素早く対応できるメンバーを確保しておきましょう。ファシリテーターはワークショップの進行に集中しなければならないため、ファシリテーターとは別にテクニカルサポート担当者を設定しておくことが重要です。

【おすすめの参加メンバーの役割と人数】

  • ワークショップ参加者  5〜6名
  • メインファシリテーター 1名
  • テクニカルサポート 1名

2. 使用ツールの選定

リモートワークショップでは、主に以下の2つのオンラインツールが必要になります。

  1. オンラインホワイトボードツール
  2. オンライン会議ツール

ニューロマジックではオンラインホワイトボードとしてmiroを、オンライン会議ツールとしてZoomを使用することがほとんどです。

オンラインホワイトボードは、対面のワークショップにおける紙製キャンバスの代わりに使用し、ポストイットへのアイデアの書き込み、投票などのあらゆる作業を行います。ニューロマジックではmiroを使用することが多いですが、MURALも同様に人気なサービスですので、ご自身で使い勝手の良い方を選んでくださいね。miroではスペースがほぼ無限大にあり、自身で1つ1つのキャンバスの大きさを自由に設定できるという点でとても便利です。あとからキャンバスを追加したりしても、全体が乱れることがありません。

オンラインホワイトボードMURAL上のワークショップテンプレート

▲ MURALでは土台となる1つのキャンバスがある

オンラインホワイトボードMiroのMiroverse上のマーケティングアラインメントワークショップのテンプレート

▲ miroではいくつも「frame」と呼ばれるキャンバスを作成可能で配置が自由

会議ツールとしてはzoomが使用されることが多いですが、社内規定などでzoomが使えないということもあるかもしれませんのでご注意を。事前に確認をした上で、参加者が使用できるツールを選びましょう。

3. キャンバスの作成

リモートワークショップではオンラインホワイトボードを使用して作成します。対面のワークショップではどこに重要な決定事項があるのか、どこを見ればこれまでの内容を振り返ることができるかが空間的な位置感覚ですぐわかるのですが、リモートワークショップでは全てスクリーン上で行うため、なかなか何がどこにあるか見つからないということも多々起きてしまいます。このようなアクティビティの最中に起きる様々な混乱を避けるために、リモートワークショップでは対面のワークショップよりもより一層わかりやすいキャンバス設計を心がけましょう。

オンラインホワイトボードMiroのMiroverse上のオレンジ色のワークショップテンプレート
▲ まとめを記入する欄を作成する、ワークショップのフローがわかるようにするなどの工夫が必要

また一度キャンバスを作成したらリハーサルを行い、どの部分がわかりにくいか、どんな説明をボード上に書いておくべきか、どこに決定事項をわかりやすく示すスペースが必要か、などを再度検討しましょう。自分1人でフローを確認するだけでも十分な効果がありますが、可能であれば参加者ではない人にもリハーサルに参加してもらいましょう。複数人で実際のアクティビティに取り組んでもらうことで、より必要な要素が顕著になります。

4. 実施環境の確認

まずは必ず参加者全員がノートパソコンやデスクトップを持っていることを確認しましょう。また、可能であればオンラインホワイトボード用とオンライン会議用で2台用意してもらうようにします。例として、以下のような組み合わせが考えられます。

  • ノートパソコンとデスクトップ
  • タブレット(オンライン会議用)とノートパソコン
  • スマートフォン(オンライン会議用)とノートパソコン 等
リモートデザインスプリントに同時使用されているiPadとパソコン、そして壁に貼られた付箋
▲ MacBookとiPadで。1台はオンライン会議用、もう1台はオンラインホワイトボード用。やりやすい配置を探ってみましょう。

加えて参加者にはできる限り静かな部屋から参加してもらう、また雑音が入るのを防ぐためにイヤホンやヘッドセットを使用してもらうように依頼しましょう。

5. オンラインツール使用の練習

ワークショップを実施する前に、必ず参加者とオンラインツールをテストし、練習するセッションを設けましょう。

まずはツールで使用する機能の選定から。オンラインツールでは数え切れないほどたくさんの機能があることがほとんどですが、実際にワークショップで使用する機能は限られています。また、参加者のテクノロジーへの親和性も考慮しながら、必要であればさらに使用する機能をあえて限定しましょう。あまりにも使用する機能が多すぎると参加者が使いこなせず、ワークショップの内容に集中できなかったり、困惑を起こさせてしまうことがあるためです。

使用する機能を決定したら参加者に操作方法をレクチャーし、練習のセッションを行います。レクチャーでは以下のような内容を確認しましょう。

  • 音声に問題はないか
  • オンライン会議ツール、ホワイトボードツールに問題なくアクセスできるか
  • オンライン会議ツールとホワイトボードツールを同じデバイスで使用する場合、双方が同時に問題なく機能するか
  • オンライン会議ツールで使用する機能(例:絵文字を使ったリアクションなど)
  • オンラインホワイトボードツールの基本的な機能(ボード上での移動、ポストイットの使い方、コピー&ペーストや複製方法など)

レクチャーが完了したら、最後にワークショップ内で行うアクティビティのような練習セッションで、実際にツールを使用してみる練習を行いましょう。

オンラインツールについて説明する際には、macOSかWindowsかで表示や操作方法が異なることがあるので注意を。練習セッションの際に見つけた不具合は当日までに解決しましょう。

6. タイムライン設計

対面のワークショップを行う際にもタイムラインを作成しますが、リモートワークショップを行う際にはより詳細に設計する必要があります。上記でも述べた通り、リモートでは使用するツールの操作なども入りますのでそれらにかかる時間も計上するのを忘れないようにしましょう。また、Google スプレッドシートのようにオンタイムで更新情報が複数のファシリテーター間で共有できるものを使用すると、変更点があっても都度新しいファイルを送信する必要がなく便利です。

例えば、投票セッションを3分で行う、という大まかな所要時間ではなく、どれに投票するかを決定する時間1分、参加者全員が投票する時間30秒、最終意思決定者がどれに投票するかを決定する時間1分、最終意思決定者による投票時間30秒、といった感じで細かく設定していきます。

Googleシートに作成されたデザインスプリントのタイムスケジュール
▲ タイムラインはそれぞれの作業にどれくらい時間がかかるかを考慮して作成

どこまで細かくタイムラインに記入するかは個人がちょうどいいと感じる程度で構いませんが、こういったそれぞれにかかる時間を意識しながらタイムラインを設計することは必須です。また、参加者からの質問に答えたりしているとすぐに数分はたってしまいますので、このような状況が起きてもどこかで調整が効くようなタイムラインを作成しましょう。

まとめ

ここまででお伝えしたリモートワークショップで準備するべきことについて、もう一度おさらいしましょう。

  1. 参加者は少なめに。参加者5名、ファシリテーター1名、補佐1名、テクニカルサポート1名を基準とすると良い。
  2. オンライン会議ツールはセキュリティに関する規定に触れているものがないかを確認した上で選定する。ホワイトボードツールは使い勝手の良いものを選ぶ。
  3. ワークショップで使用するオンラインキャンバスは、対面でのワークショップよりわかりやすい設計を心がける。
  4. ワークショップに参加する際はできる限り2つのデバイスを用意し、1台を会議ツールに、もう1台をホワイトボードツールに使用する。
  5. ワークショップを実施する前に、オンラインツールを練習するセッションを設ける。
  6. ワークショップのタイムラインはオンラインツールの操作にかかる時間を考慮して作成する。

ぜひここでご紹介したコツを参考にして、リモートワークショップに挑んでみてくださいね。

石田智絵

サービスデザイナー

BBA取得後顧客中心の視点に関心を持ち、サービスデザイナーとして入社。ワークショップを中心に多業界のサービスデザインプロジェクトに携わる。経済的、社会的、環境的にサステナブルな世界のためのデザインの探究にも熱心。

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