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データから見るサービス経済とデザインの今

   

はじめに

近年、テクノロジーの進化や流行の移り変わりとともに、ビジネスの世界では非常に大きな変化が起きています。

そのうちの一つが、サービタイゼーションと呼ばれるものです。

「サービタイゼーション」 はサービス化とも言われ、生産した製品を販売するだけではなく、製品を「サービス」として提供することによって売り上げを上げるビジネスモデルのこと。最近、モノ消費からコト消費への比重の移り変わりとともに、これまで「モノ」の販売を主に行なっていた製造業において、よく見られるようになっています。

そもそも、製品だけでなく「サービス」を提供するとはどういうことでしょうか?

例えば、自動車メーカーはお客さんに対して車を販売しています。ここでお客さんは、車そのものに対してお金を払うという認識が一般的ですが、それだけではないかもしれません。車の中でどのように過ごせるか、車でどこへ行けるのかなど、製品を通じて得られる体験もまた、消費者がお金を払う理由になるのです。さらに、車の故障時にはどうすれば良いのか、車を使わなくなった場合はどうすることができるのかなど、製品につながる全ての体験が広義の「サービス」に含まれます。

このように、顧客体験全体を含む「サービス」が重要性を増しています。

そこで、今回の記事では実際にサービスをめぐる国内外の具体的なデータをもとに、サービスとデザインの可能性についてご紹介します。後半では、サービスを改善するための一つのアプローチ「サービスデザイン 」を取り上げ、デザインとビジネスの関連性をご紹介します。このブログを通じて、ファクトに基づいたこれからのビジネス動向、トレンドを知っていただければ幸いです。

それでは始めましょう!

サービス産業を統計から見る

サービスを全体的にとらえ、まずはサービス産業の動向を見て行きましょう。

ここでは国内外のサービス産業、サービタイゼーションにまつわる統計を集めています。

サービス産業の統計

まず、サービス産業をとりまく状況について。

世界のサービス産業は20世紀からこれまで急激に成長し、今では世界のGDPの65%、日本のGDPの70%を占めています(図1,図2)。また、GDPに占めるサービス産業の割合は規模とともに年々増加し続け、コロナ禍の影響が懸念されるものの上昇傾向を保ってきました。

次に、サービタイゼーションに関するデータ(図3)。2019年度に実施された国際的な調査ではメーカー19万社のうち、38%が製品だけでなくサービスも提供しているということでした。

さらに、2018年5月に米アトランタで開催されたIFS World Conference 2018にて、マーク・ブリュワー氏(Global Industry Director)は「なぜサービスが大事か?それは”サービスが世界を食べている”からです。すでに世界経済の70%はサービスですし、サービス収入が20%しかない製造業でも、利益では60%になるでしょう」と話しました。

“すでに世界経済の70%はサービスですし、サービス収入が20%しかない製造業でも、利益では60%になるでしょう”

– Mark Brewer (引用:「すべての企業、特に製造業や装置産業が向かうべき”サービタイゼーション”の最前線」)

つまり「サービス」は世界、そして日本の経済の主体となっており、またそれ以外の分野、つまり製造業などの産業においても切って離せない存在となりつつあるようなのです。

ビジネスとデザインの可能性

ここまで、国内外の統計をもとに、サービスをめぐる現在の状況がお分かりいただけたかと思います。

では実際に、サービスの改善、特にデザインを使ったサービスへのアプローチが企業の業績にどのような影響を与えるのか見て行きましょう。

サービス産業とデザインの統計

はじめに、顧客サービスがビジネスに与える影響についてのデータをご紹介しました。顧客維持率が5%増えると、利益が25%から95%増えていくという結果にもあるように、「サービスの改善」が事業成果に対して大きな影響を持っているのです。

それでは、どうすればサービスが良くなるのか?という疑問が出てきますが、それに対するアプローチの一つにデザインがあります。

特にサービスデザインと呼ばれる分野では、顧客体験また事業に関わるステークホルダー全体の体験をサービスと捉え、デザインの視点から積極的なサービスの改善を行っていきます。サービスデザインは、定量的なデータだけでなく、定性的なデータを扱って顧客の特性を探っていくことが特徴的です。

実際、デザインを経営に取り入れている企業はより優れた成果を上げているという結果があり(図2)、ビジネスとデザイン、この二つの関係は注目を集めている分野でもあります。次に紹介したグラフを解説します。

図2-1は、マッキンゼーが発表した「Business value of design」による結果報告書。このレポートでは、世界の上場企業300社の財務資料、及びデザインに関わる施策を調査し、McKinsey Design Index(MDI)として指標化。調査は医療技術、消費者向け製造業、リテールバンキングの三つのセクターを対象としたものでした。

図2-2は、Design Management institute による調査結果です。この調査ではS&P 500企業中、デザインを重視する企業(16社)とその他の企業について株価の変動を調べています。結果として、デザインを重視する会社の株価が2005年から10年間で平均と比べて2.1倍も成長していました。

統計を見ていく中で、デザインやサービスを向上することが事業成績に好影響を及ぼすことがわかってきました。


まとめ

競争が加速し、製品のコモディティ化が進む中、いかに付加価値を造るかということが重要になっています。そんな中、付加価値として「サービス」を提供している企業が、利益率の向上、他との差別化、そして顧客中心主義を実現させています。またデザインは、ビジネスに新しい視点をもたらすものとして重要性を高めています。

今回インフォグラフィックでご覧いただいたように、データに基づいたサービス、デザインをめぐるインフォグラフィックから新たなインサイトをお届けできましたら幸いです。

サービスデザインについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照いただけるほか、ニュースレターへの登録やニューロマジックSNSのフォローをしていただくと、最新情報をご覧いただけます!

佐々木怜

サービスデザイングループ・インターン生

東京外国語大学言語文化学部に在籍。大学ではフランス語と社会言語学を専攻し、社会や文化に関心を寄せている。翻訳や記事の執筆を行う。サービスデザイン分野、サステナビリティを勉強中。

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