あらゆるビジネスにおいて、ユーザーやクライアントを深く理解するのはとても重要なこと。 サービスやプロダクトが世に溢れる中、「これを使ってみたい」と思ってもらえるものを届けるために、ユーザーのペインやニーズを汲みとり、正確にアプローチしたいですよね。 そんなときに役立つのがペルソナです。
本記事では、ペルソナの基礎、作り方、そして設定時に注意すべきポイントを解説します。
ペルソナとは
そもそもペルソナとは、自社のサービスを利用する顧客やユーザーのタイプを表す架空の人物像のこと。この架空のキャラクター、ペルソナは、実際の顧客を対象にした調査を通じて明らかになったことや、顧客に共通して見られる課題、特徴などを総合して作成されます。サービスやプロダクトを利用する可能性のある、さまざまなタイプのペルソナを作成することで、ユーザーのニーズ、行動や目標を理解することができるのです。
ご自身の関わっているサービスあるいはプロダクトを使っているのがどんな人かと想像してみてください。今、頭に浮かんだユーザー像がペルソナのヒントになります。このイメージを参考に、インタビューで裏付けをとり、具体的にユーザー像を可視化することで、それがデータに元づく指標の一つ、ひいてはチーム内の共通認識になります。メンバーがそれぞれ少しずつ異なるユーザーを意識しながらプロジェクトを進めてしまうとなかなか足並みが揃いませんが、ペルソナを設定すると、チームがペルソナを共通言語とし、一貫性を保ちながら進めていくことができるのです。
さらにペルソナは、すべてのユーザーを1つのカテゴリーに入れて一般化したり、誰もが同じニーズや目標を持っていると考えたりしてしまうのを防ぐのに役立ちます。また、サービスやプロダクトを利用する中での自分の経験がユーザーの体験と一致する、と思い込むことも防げるというメリットもあります。
では、ペルソナは具体的にどのようなものなのでしょうか。ここで、二つの例を使って、適切なペルソナがどんな形式なのか考えてみましょう!
今回はA・B二種類のパターンを使い、アウトドアウェアを開発する場合を想像してみます。
パターンA
年齢:三十代
性別:男性
職業:コンサルタント
家族:妻、娘二人
趣味:キャンプ、旅行
パターンB
佐藤剛士さん
年齢:32歳
性別:男性
職業:コンサルタント。残業が多い。
家族:妻、娘二人(5歳、8歳)
趣味:週末にキャンプに行ったり、旅行に行ったりするのが楽しみ。
性格:温厚で真面目
パターンA・Bのどちらがわかりやすいでしょうか?
パターンAは無機質な情報が並んでいてイメージしづらいですよね。一方で、パターンBはその人がまるで実在しているかのように具体的です。お察しの通り、ペルソナにはパターンBがふさわしいです。パターンBでは、休日にアウトドアを楽しむターゲット像が文脈の中で想像しやすくなっています。さらに、「佐藤さんならどうする?」「佐藤さんならどう感じるだろう?」というようにチーム内の共通言語にもなります。逆に、パターンAはいわゆるターゲットと呼ばれるものに近いですね。
ペルソナは、サービスを利用する個人に共感するためのものです。そのため、格式ばった書類というよりも、ソーシャルサイトで見かけるプロフィールのようなものだと考えてよいでしょう。
ペルソナの完成形は以下のようなイメージになります▼

ペルソナの作り方
1. はじめに項目を確認する:ユーザーインタビューのメモをもとに、コアユーザーを表すペルソナを1~2人作成します。それぞれのペルソナは、ストーリーやサービス、プロダクトの利用場面が少しずつ異なるはずです。ここでは大まかにペルソナの説明を書いてみましょう。 一般的なペルソナには以下の項目が含まれます。ビジネスのターゲットによって(B2B、B2Cなど)内容を調節する必要があります。
- 名前
- 年齢
- 性別
- 家族構成
- 職業
- 趣味
- ITリテラシー
*使用しているデバイスどこにペルソナを作るべき? ペルソナは、紙に書くこともできますが、PowerPoint、Googleスライド、Keynoteなど、お持ちのソフトウェアを使って作成を始めることができます。また、デザイン思考のソフトウェアツールやウェブアプリケーションを使えば、ペルソナのレイアウトをカスタマイズしながら始められます。中でもMiroは、この種の作業に最適なツールのひとつです。Miroはオンラインのホワイトボードツールで、すでに ペルソナのテンプレートも用意されているので、チームでそのまま作業を始めることさえできてしまいます。
2. ペルソナを具体化させる。次のステップでは、ユーザーのニーズやゴールを表す画像、言葉などを盛り込み、ペルソナをさらに洗練させましょう。ペルソナ作成を丁寧に行うことは、ユーザーへの理解を深め、共感を得るために有効です。先ほどご紹介したように、ペルソナはある程度の具体性を持つ必要があります。ユーザーの人物イメージを視覚化するために、Pexelsのようなフリー画像素材サイトなども便利です。
3. アイデアを話し合いながら、行動シナリオを作成する。ここではペルソナがプロダクトやサービスを使いたい、と思うシナリオを作りましょう。シナリオは通常の場合、解決したいと思う問題が出て来た状況にペルソナを置くことから始まります。そのユーザーのモチベーション、ゴール、ニーズは何でしょうか?さらに、ペインポイントや課題はどのようなものがあるでしょうか?ここでユーザーのペインポイントなどを洗い出し、ストーリーを作ることでより深い共感を引き出します。具体的にはストーリーボードなどが有効です。ペルソナがユーザーになるシナリオを作成することで、ペルソナに現実性を持たせることができます。
4. 最終調整をする。場合によっては、1つのプロジェクトで8種類ものペルソナが出来上がることもあります。まずは似たようなペルソナを統合し、重複をなくすことができないか考えてみましょう。それでもペルソナの数が多すぎると感じる場合は、投票を実施してみるのも一つの手です。チャットアプリかメモ用紙を使って、どのペルソナをコアユーザーのペルソナにするかを参加者に尋ねます。誰のためにデザインを最適化すべきか?という質問をここで改めて投げかけ、最終的な調整をしましょう。
ペルソナを作るときに注意すること
ペルソナの作り方をご紹介しましたが、ここでペルソナを作る際に気をつけておきたいポイントを3点ご紹介します。注意点を意識することで、ペルソナをうまく活用しましょう。
- 偏見を持たない 年齢、性別、居住に関する情報が誤解を生むことがあります。これらの情報はユーザーのイメージを作り成す要素ではありますが、適切に扱わなければ誤った方向に導かれてしまいます。「女性は〇〇が好きなはず…」「△△にはこういう人がいるから…」など、ステレオタイプに基づいた推測や決めつけをしてしまわないようにしましょう。
- 情報を絞り込む ペルソナに不要な情報を加えないようにしましょう。先ほど紹介したように、ペルソナの性格や趣味についての情報があるとイメージしやすいですが、情報が多すぎるとかえって逆効果になりかねません。プロジェクトに関連性のある情報を中心に、ユーザーをイメージしやすい抽象度を探ってみましょう。
- 理想化しすぎない ペルソナ作成の中でもっともよくある失敗、それはペルソナを理想のユーザー像にしてしまうこと。架空の人物を作り上げるのではなく、実在するユーザーをイメージしながら作成しましょう。この失敗を防ぐには、インタビュー結果、つまり実際のユーザーのインプットに基づいてペルソナを作成することが大切です。
* 定期的に更新する ペルソナ作成後のポイントになりますが、一度作成したペルソナの内容は定期的に修正しましょう。なぜ修正が必要なのかというと、テクノロジーの発展などによる外的環境の変化がペルソナのプロフィールに影響を与えることがあるからです。例えば、携帯がスマートフォンに変わった時期など、知らず知らずのうちに急激な変化が起きていることもありますよね。時には、既存のペルソナの説明を書き直したり、新しいペルソナを追加したり、あるいは古くなったペルソナを削除したりする必要があります。
おわりに
ここまでペルソナについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
ペルソナは非常に便利なツールであると同時に、ミスリードを防ぐために注意するべき点もあるということがお分かりいただけたかと思います。
ニューロマジックでは、ペルソナのテンプレートのことを「ヒーロープロファイル」と呼んでいます。ユーザーはそれぞれのジャーニーのヒーローであり、ゴールを達成する探求の旅をしていることに由来します。
ペルソナ設定をしてみたい方は、ペルソナのテンプレート「ヒーロープロフィール」をダウンロードしてご自由にお使いください!
ペルソナ・テンプレートをダウンロード:


佐々木怜
サービスデザイングループ・インターン生
東京外国語大学言語文化学部に在籍。大学ではフランス語と社会言語学を専攻し、社会や文化に関心を寄せている。翻訳や記事の執筆を行う。サービスデザイン分野、サステナビリティを勉強中。
