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マーケティング戦略策定フレームワーク

   

マーケティングチームが企業の目標を明確に理解し、正しいリードを獲得したり、ビジネスの成長を促すのはとても重要なこと。しかし、組織が変革期を迎えているときや、ビジネスが新しい環境へと適応しなければならないとき、新たなマーケットへと参入しようとしているときには、なかなかマーケティングへの反映までうまくできないものです。

そこでニューロマジックが考案したのが、たった3時間でできる「マーケティングアラインメントワークショップ」。アラインメント(alignment)という言葉には、足並みを揃えるという意味があります。タイムボックス方式(時間の決められたタイムラインに沿って行う方式)で個人ワークとチームワーク(together, alone*1)でエクササイズに取り組むことで、社内で明確になっていない点があるままマーケティング戦略を設定するのを避け、社内での認識を一致させてから、より有効なプランを設計することができるというものです。このワークショップを実施することで、会社の目標や方向性をきちんと具現化し、それを元にマーケティング戦略の土台を導き出すことができます

このマーケティングアラインメントワークショップでは、マーケティング担当者だけでなく、もちろん意思決定者や組織のリーダーたちにも出席してもらいましょう。意思決定者やリーダーたちによるインサイトは、マーケティングの方針が今後どうであるべきかを示すカギになります。またそれだけでなく、会社のリーダーたちにこのワークショップに出席してもらうことで、次のステップが決まった際きちんと組織内で支持を集められることにもつながります。

ニューロマジックが提供しているマーケティングアラインメントワークショップは、主に以下の3つのエクササイズで構成されています。

  1. ゴールデンサークル
  2. 長期、短期の会社目標
  3. 長期、短期のマーケティング目標

このワークショップは対面、リモートのどちらでも実施可能です。もしリモートでの実施を検討されている方は、ニューロマジックの作成したテンプレートを是非ご活用ください。英語のみになりますが、オンラインホワイトボードツールMiroによるプラットフォーム「Miroverse」にて公開されているオープンソースで、無料でお使いいただけます

「Miroverse」にて公開されているニューロマジックが作成したマーケティングアラインメントワークショップのテンプレート
▲ Miroverseから「Neuromagic」で検索、もしくは上のイメージをクリック

マーケティングアラインメントワークショップでは、ゴールデンサークル、会社目標、マーケティング目標のいずれのエクササイズにおいても、意思決定者の参加が必要になります。ここでの意思決定者とは、それぞれのエクササイズ内で出されたアイデアに対し、どれが最も重要で企業に合っているかを判断する、最終的な投票決定権をもつ人になります。したがって、①ゴールデンサークル②会社目標のエクササイズでは、CEOまたは執行役員に、そして③マーケティング目標のエクササイズではマーケティング責任者が意思決定者として参加してもらうようにしましょう。

それでは、ここからは実際にどのようなプロセスを通してこのワークショップが進められるのか、詳しくご紹介していきます。

1. ゴールデンサークル

ゴールデンサークルの図

スタートアップやビジネスイノベーション、ブランディングのご経験をお持ちの方は耳にしたこともあるかもしれませんが、最初のエクササイズは「ゴールデンサークル」。ゴールデンサークルは企業価値を定義し、理解するのに役立つフレームワークで、2009年サイモン・シネックのTEDトーク「優れたリーダーはどうやって行動を促すか(How great leaders inspire action)」で紹介されました。シネックは成功する偉大なリーダーや組織には共通するパターンがあり、彼らは皆WHY、HOW、WHATの順で行動するのだと主張しました。

▲ サイモン・シネック「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」

WHY、HOW、WHATは以下のように説明されています。

WHAT:企業が提供するプロダクトやサービス。

HOW:プロダクトやサービスをどのようにしてユーザーに届けるか。ここで独自の方法を使い、競合との差をつけることのできることもできるかもしれないが、消費者の心を打つまではなかなか難しいところ(だから、WHYが重要)。

WHY:自分がしていることを突き動かしている、目的や理由、信念。多くの人々はWHYを考えずに物事を進めるため、こうした人々によるサービスは突出しない。WHYは金銭的な利益とは何の関係もない。関連しているのは、意図だけ。

私たちがここでゴールデンサークルについて説明しているのは、きちんと強い意味をもったゴールデンサークルは、成功するマーケティングを生む重要なステップであると考えているからです。自分の組織のコアとなる部分をきちんと設定し、それを皆で確認すれば、マーケティングや企業戦略全般の背後にある目的を明確にし、行動に移すことができます。

ワークショップでゴールデンサークルを行うときには、会社の上位の役職についているメンバーを招くことが必須です。執行役員や社内の重要な意思決定者には必ず参加してもらいましょう。なおマーケティング担当者のこのアクティビティへの参加は必須ではありませんので、状況に応じて参加してもらうかは判断しましょう。

「人々は 『なぜやっているのか』に反応するのに、

なぜやっているのかを自分でわかっていなければ、

投票してもらうにせよ、何か買ってもらうにせよ、

みんなを引き付けられるわけがない。

何よりあなたがしていることに忠誠心を持って

加わりたいなどと思わせられるわけがない」

– Simon Sinek

■ エクササイズの流れ

1-1. WHY

  • 5分間で何が会社の「WHY」にあたるかをそれぞれ個人で考え、静かに書き出す。
  • 参加者それぞれが書き出したWHYを声に出して読み上げ(1人あたり1分半)、他の参加者とシェアする。
  • 最も共感し、最もよく会社を表していると思うWHYに、参加者それぞれが静かに投票を行う(通常は丸いステッカーを使用したドット投票*2を行う)。
  • 投票の結果を受けてWHYに関するディスカッションを全員で行い、意思決定者を中心に最終的な会社のWHYを一文にまとめる(8分)。
ゴールデンサークルの要素を説明した図
▲ まずは中核となるWHYから考える

1-2. HOWとWHAT

  • 5分間で会社のHOWとWHATを同時に書き出す(WHAT=具体的なプロダクト、サービス を考える際、同時にHOW=どのようにしてプロダクト、サービスを提供、実現しているか をセットで書き出すとやりやすいため)。
  • 参加者それぞれが書き出したHOWとWHATを声に出して読み上げ(1人あたり1分半)、他の参加者とシェアする。
  • 最も重要であると思うHOWとWHATに、参加者それぞれが静かに投票を行う。
  • 投票の結果を受けてHOWに関するディスカッションを全員で行い(3分)、意思決定者が最終的に2〜3個最も重要なHOWを選ぶ(1分)。
  • 投票の結果を受けてWHATに関するディスカッションを全員で行い(3分)、意思決定者が最終的に2〜3個最も重要なWHATを選ぶ(1分)。
ゴールデンサークルのHOWを表した図
ゴールデンサークルのWHATを表した図

このアクティビティが終わる頃までには、ワークショップ参加者は自社は何をしていて、何が市場での差別化につながっていて、そもそもなぜこれらを追求しているのかを明白に認識できているでしょう。サイモン・シネックが述べているように、「人々は 『なぜやっているのか』に反応するのに、なぜやっているのかを自分でわかっていなければ、投票してもらうにせよ、何か買ってもらうにせよ、みんなを引き付けられるわけがない。何よりあなたがしていることに忠誠心を持って加わりたいなどと思わせられるわけがない」のですから、WHYはとても重要なのです。

ゴールデンサークルの日本語テンプレートもご用意していますので、
ぜひご活用をください:https://sdg.neuromagic.com/golden-circle/

2. 長期、短期の会社目標

ゴールデンサークルを土台として、企業目標を考える表現
     ▲ゴールデンサークルを土台として、企業目標を考える

マーケティングアラインメントワークショップの次のアクティビティでは、長期、短期の会社目標を設定し、皆の認識を一致させます。これらの目標はマーケティング戦略の方向性を定め、優先すべきマーケティング目標を選定するのにも役立ちます。マーケティング担当者のこのアクティビティへの参加は必須ではありませんが、執行役員やそのほかの会社の重要な意思決定者には必ず参加してもらいましょう。マーケティング担当者が参加すべきかどうかは、状況に応じて判断しましょう。

このエクササイズでは、長期目標を5年先の目標と設定することがほとんどです。5年程度であれば想像するのも難しくはありませんし、一方で今すでに取り組んでいるプロジェクトと直接関わっていることはほとんどなく、はっきりとしたアイデアが今すでにあるわけでもないからです。短期目標は、通常2年先の目標と設定します。ただしここで出している年数はあくまで目安ですので、ご自身の組織に合った年数を設定してみてくださいね。

エクササイズの流れ

  • 5分間で長期の会社目標をそれぞれ個人で考え、静かに付箋に書き出す。
  • 参加者それぞれが付箋に書き出した長期目標を1人ずつ読み上げ(1人あたり1分半)、他の参加者とシェアする。
  • 2分間で最も適していると思う長期目標に、参加者それぞれが静かに投票を行う。
  • 投票の結果を受け、意思決定者(CEOや執行役員など)が最も重要だと思う長期目標を最終決定する(3分)。ここでは、1つだけでなく2つ選んでも構わない。必要であれば、参加者の間でディスカッションをしてから決定する。
  • 上記と同様のステップを、短期目標でも行う。

3. 長期、短期のマーケティング目標

企業目標を元に、マーケティングでは何を達成するべきか考える表現
    ▲ 企業目標を元に、マーケティングでは何を達成するべきか考える

このエクササイズでは長期、短期の会社目標と全く同じステップをとりますが、異なるのはマーケティング担当者の参加が必須という点です。執行役員やそのほかの重要な社内ステークホルダーの都合が合わず、参加できない場合はそれでも問題ありませんが、参加してもらえると、のちに確実にマーケティング目標がきちんと達成されるためにより多くのサポートがもらえる、ということを心に留めておいてくださいね。

このエクササイズに取り掛かる前に、ファシリテーターは参加者に必要に応じてゴールデンサークルを振り返るように声がけをしましょう。また、WHAT、HOW、WHYをすぐに見返すことのできる場所に貼り出しておく工夫をするのも重要です。長期、短期の会社目標も必ずこのエクササイズのキャンバスやその近くに貼り、すぐに参考に見れるようにしましょう。マーケティングアラインメントワークショップの利点は、会社目標を包括的に考え、これをマーケティング戦略に直接繋げることができるということ。ですから、参加者がマーケティング目標を考える際にはここまでのエクササイズの内容を忘れずに心に留めてもらえるようにすることが重要です。

短期目標は、行動に移せるような具体的なものにしましょう。長期目標は、少し今から考えると現実的でないような理想でも構いません。

例としてサーフィングスクールの企業のマーケティング目標を挙げると、こんなものが考えられます。

短期目標:

  • Google検索「日本のサーフィングスクール」で、1番になる
  • 5人のプロサーファーにリポストされる


長期目標:

  • サーフィンに関するブログで、アジアで1番になる
  • サーフィンスクール業界で、先駆者と認識されるようになる

エクササイズの流れ

このエクササイズの流れは、会社目標と同じです。

  • 5分間で長期のマーケティング目標をそれぞれ個人で考え、静かに付箋に書き出す。
  • 参加者それぞれが付箋に書き出した長期目標を1人ずつ読み上げ(1人あたり1分半)、他の参加者とシェアする。
  • 2分間で最も適していると思う長期目標に、参加者それぞれが静かに投票を行う。
  • 投票の結果を受け、意思決定者(マーケティングチーム責任者など)が最も重要だと思う長期目標を最終決定する(3分)。ここでは、1つだけでなく2つ選んでも構わない。必要であれば、参加者の間でディスカッションをしてから決定する。
  • 上記と同様のステップを、短期目標でも行う。
短期目標から長期目標への変化を表した図
▲ ①長期目標を先に考え、その達成にはどのような具体的な②短期目標が必要かを考える

4. 次のステップ

さて、ゴールデンサークル、長期と短期の会社目標、長期と短期のマーケティング目標ができた頃には、きっとこれまで以上にチームと同じ認識をもてている感触が得られるはずです。ワークショップでせっかく決めたことは無駄にしたくはありませんから、まだメンバーが解散する前に、次のいくつかのマーケティングステップをささっと決めてしまいましょう!ここで決定するのは、ワークショップ中に決定した短期目標へとつながるようなステップになります。今後具体的な話を始めるために誰かがメールを送るとか、新しいSlackチャンネルを作成するとか、そんな簡単なステップで構いません。ただ、ここで生まれたディスカッションを今後もきちんと続けられる場所を確保することが重要です。

ここまでマーケティングアラインメントワークショップについて詳しく説明してきましたが、これよりももっと詳しいマーケティング戦略のプランニングを行う場合、ニューロマジックではマーケティング戦略スプリントを実施しています。マーケティング戦略スプリントは、UVP(ユニークバリュープロポジション)やセグメンテーションなどまで、もう少し深く詳細まで決めていくワークショップです。でも、もし皆さんが今抱えている問題が「きちんと社内で同じ認識をもちながら今後マーケティング活動をしていきたい」というだけであれば今回ご紹介したマーケティングアラインメントワークショップでも十分効果がありますので、是非活用してみてください。

改めてになりますが、マーケティングアラインメントワークショップをリモートでやりたい、と検討している皆さん。冒頭でもご紹介しました通り、ニューロマジックでご用意したMiroのテンプレートをMiroverseでご覧いただけますので、是非活用してみてくださいね。英語のみになりますが、記入するのは日本語でも可能ですので是非一度はご覧になってみてください。

「Miroverse」にて公開されているニューロマジックが作成したマーケティングアラインメントワークショップのテンプレート
▲ miroテンプレートへは、こちらから

Happy Sprinting!

*1 「together, alone」:デザインスプリントやワークショップの大きな前提の一つ。はじめに静かに個人で考え、そしてグループ全体で共にディスカッションをする。

*2 ドット投票に関する説明(外部リンク、英語のみ):https://www.nngroup.com/articles/dot-voting/

岩田エレナ

デジタルコンテンツプロデューサー

アメリカ出身。メディアコミュニケーションの学士号を取得後、2019年ニューロマジックに新卒入社。現在は自社のSNS企画運営に加えて、サービスデザインに関する記事の執筆、インタビュー、撮影までをマルチにこなす。

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