環境省の「環境表示ガイドライン」改定が企業に問うもの

2026年3月31日、環境省が「環境表示ガイドライン」を13年ぶりに改定しました。

改定自体は各所で取り上げられていますが、「表現ルールが更新された」という理解だけでは、今回の改定が示す構造変化は捉えにくいかもしれません。

今回の改定が示しているのは、企業の環境訴求に対して、社会が求める説明の水準が変わりつつあることではないでしょうか。

ここでいう「根拠」は、単なるデータの有無ではありません。どの主張を、どの範囲で、何によって支えるのか。そうした構造まで含めた考え方が、より重要になってきています。

ガイドラインなのに、なぜ無視できないのか

まず前提として、このガイドライン自体には法的拘束力はありません。いわゆるソフトローであり、違反したからといって直ちに行政処分を受けるものではありません。

ただ、実務上の意味は小さくありません。

本ガイドラインは、企業が環境表示を見直すうえで、景品表示法(景表法)上のリスクも含めた参照点として、無視しにくい位置づけになりつつあります。

法律そのものが変わらなくても、「説明できる表現」として許容される水準は変化します。「ソフトローだから」と静観するだけでは、十分なリスク対応とは言いにくい状況になりつつあります。

今回の改定は、「曖昧な表現は避けるべき」という話にとどまりません。環境訴求に求められる前提そのものが変わりつつある点も重要です。

たとえば、「環境にやさしい」「エコ」といった抽象表現は、それだけでは成立しにくくなっています。何に対して、どのような点で、どの程度優れているのかを説明できることが、これまで以上に求められています。

また、一部工程だけを切り取ったCO₂削減訴求も、ライフサイクル全体との整合の中で見られる傾向が強まっています。比較優位を語る場合にも、比較条件や対象範囲、根拠データの明示がより重要になっています。

一言でいえば、環境表示は「主張」から「検証可能な構造」へと軸足が移りつつあるとも整理できそうです。

なぜ問題が起きやすいのか

こうした問題は、個別の表現以前に、企業内プロセスに起因することも少なくありません。

多くの場合、伝えたいメッセージが先に設計され、その後に根拠を補強する流れになりがちです。その結果、表現の強さに対して裏付けが追いつかない、といったことが起こりやすくなります。

これは個別企業の問題というより、構造的に起きやすい現象とも言えます。今回の改定は、そうしたプロセス自体の見直しを促すものとして読むこともできそうです。

また、こうした変化は日本に限りません。欧州では一般的な環境訴求への規律強化が進み、オーストラリアでも誤認を招く環境表示への高額なペナルティが命じられた事例が出ています。

国内ガイドラインと切り分けるより、国際的な流れの一部として見る必要もありそうです。今対応しないことの影響は、将来のコストにとどまりません。企業信用の観点でも、すでに無視しにくい論点になりつつあります。

必要なのは「表現の修正」ではない

環境表示の見直しは、言い換えで対応できるものと捉えられがちですが、本質はその裏にある構造の整理にあります。重要なのは、「どこまで言えるか」を広報・マーケティング・事業部門を含めて部門横断で共通認識として設計することです。

「言えることだけ言う」のではなく、「言える状態をつくる」ために、どのデータがどの主張を支えるのか、どの範囲まで訴求できるのかを整理することで、表現は結果として整っていきます。

加えて、ESG開示と広告・PR・採用などの対外発信との整合も重要です。同じ事実が、異なる発信の文脈をまたいで一貫したストーリーとして語られる状態が求められます。そのうえで、まず見直しやすい論点として、自社の環境関連表現の棚卸し、根拠データや前提条件の確認、そして表現と実態のギャップ確認などは、着手しやすいポイントかもしれません。

今回の改定は、表現ルールの変更というより、説明責任の前提が変わりつつあることを示しているようにも見えます。その意味で今問われているのは、表現テクニックではなく、根拠をどう設計するかという視点なのかもしれません。

環境表示を「説明できる構造」へ設計する

ニューロマジックでは、環境表示やサステナビリティ発信について、根拠整理・開示との整合・コミュニケーション設計まで含めてご支援しています。
環境訴求の見直しなどを検討されている場合は、お気軽にご相談ください。現状表現のレビューからでも問題ありません。

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参考:環境省「環境表示ガイドライン」(2026年3月31日改定)