アースデーの時期になると、「環境にやさしい行動を広げよう」というメッセージが増えます。マイバッグの持参、節電、資源の分別。いずれも重要であり、多くの人がその必要性を理解しています。それでも、なぜ行動は広がりにくいのでしょうか。なぜ自分自身でも続かないのでしょうか。
サステナビリティの文脈ではしばしば、「意識を高めれば行動は変わる」という前提が置かれます。しかし、その前提自体を一度見直してみる必要があるのかもしれません。
意識では、行動は変わらない
多くの企業がサステナビリティ施策として、情報発信や啓発活動に取り組んでいます。環境課題の深刻さを伝え、データを提示し、行動を促す。こうした取り組みは欠かせないものです。
一方で、現実には、「理解しているのに行動しない」「一時的には取り組むが続かない」といった状況も多く見られます。
このギャップは、意識の問題というよりも、行動の設計に起因している可能性があります。人の行動は、必ずしも意識的な意思決定だけで成り立っているわけではなく、習慣や環境の影響を強く受けています。
「正しいと理解していること」と「実際に行動すること」のあいだには、構造的な隔たりが存在しているとも言えます。
行動は「環境設計」によって変わる
行動変容に関する研究では、人の行動は意思よりも環境に影響されやすいとされています。手間がかかる行動は選ばれにくい。選択肢が複雑であれば判断は先送りされやすい。実行しても評価やフィードバックが得られなければ、継続にはつながりにくい。
こうした傾向は、個人の意識の問題というよりも、人間の認知特性に基づくものと捉えられます。裏を返せば、環境や仕組みが適切に設計されていれば、特別な意識がなくても行動は自然と選ばれるようになります。
たとえば、エコバッグを「持つべきもの」として促すのではなく、持参が前提となる購買体験にする。分別を「努力が必要な行動」とするのではなく、迷わず実行できるオペレーションにする。
ここで重要になるのは、啓発そのものではなく、「選択がどのように設計されているか」という視点です。

企業側の構造課題
サステナブルな行動が広がらない要因は、生活者側だけにあるわけではありません。企業側の構造に起因するケースもあります。
たとえば、オペレーションが複雑で現場の負担が増えている、取り組みがKPIや評価制度と連動していない、部門ごとに施策が分断されている、といった状況です。 こうした状態では、担当者の努力に依存した運用になりやすく、組織としての継続性が担保されにくくなります。
サステナビリティを推進する上では、「意識をどう変えるか」だけでなく、「どのような構造になっているか」を見直すことが、重要な論点になるのかもしれません。
体験設計 × 制度設計
では、サステナビリティにおける行動変容を促すには、何を設計する必要があるのでしょうか。
一つは、現場で無理なく実行できるオペレーション設計です。サステナブルな選択が追加的な負担として認識される限り、広がりは限定的になります。日常業務の中で自然に選択される状態をつくることが出発点になります。
もう一つは、意思決定と接続されたKPI設計です。取り組みが評価や意思決定と結びついていなければ、組織としての優先度は上がりにくくなります。事業と接続された指標を設計することで、個人の行動が組織の動きへと変換されていきます。
さらに、行動が自然に選ばれる体験設計。環境配慮を「意識の高い人の選択」にするのではなく、「意識しなくても選ばれる選択肢」に変えていくことです。
こうした設計が重なり合うことで、行動は一時的なものではなく、継続的なものへと変わっていきます。
「施策」から「構造」へ
企業にとってサステナビリティは、規制対応や投資家対応といった外部要請とも密接に関係しています。ただ、それらへの対応が中心になると、取り組みが一過性の施策として扱われる場面も生まれます。
レポート作成の時期だけ対応が集中する。評価対応のたびに個別に動く。そして翌年も同じ対応を繰り返す。
こうした状態は、サステナビリティが業務プロセスや意思決定の中に十分に組み込まれていないことを示しているとも考えられます。
サステナビリティはイベントではなく、日常の意思決定や運用に統合されてはじめて機能するものです。意識の向上は重要ですが、それだけでは十分とは言えない場面もあります。
行動変容を支える構造設計
私たちは、「人を変える」のではなく、「人が自然に動ける状態を設計する」ことを重視しています。
「どのように伝えるか」ではなく、「どのような構造であれば行動が自然に選ばれるか」。
「誰に気づいてもらうか」ではなく、「どこを変えれば行動が変わるのか」。
CDPやEcoVadisへの対応、Scope3の算定といった取り組みも、それ自体を目的とするのではなく、どのように組織の意思決定やオペレーションに組み込まれているかが重要になります。構造設計が十分でない場合、取り組みは毎年の業務として繰り返される傾向があります。
一方で、構造に組み込まれていれば、特別な負荷をかけずに継続される状態に近づいていきます。
「続く」状態をつくる

アースデーは、意識を高める機会であると同時に、サステナビリティの取り組みを構造として捉え直すきっかけにもなり得ます。
もし、「どこから見直せばよいのか分からない」と感じられる場合、構造を捉え直すことが一つの入り口になるかもしれません。
ニューロマジックでは、取り組みが現場で無理なく回り、組織として継続していく状態をつくるための設計をご支援しています。
まずは現状を整理するところからでも問題ありません。お気軽にご相談ください。
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