「海を守る」だけではない。企業が見直したい“海洋リスク”という経営課題

本日、6月8日は世界海洋デーです。「海を守ろう」という呼びかけが並ぶ一方で、企業の視点から見ると、少し違う問いが浮かび上がります。海洋に関わる変化は、すでに事業の前提にどのような影響を与え始めているのでしょうか。

本記事で扱う「海洋リスク」は、海洋環境の変化だけを指すものではありません。調達・物流・立地・規制・市場認識など、そこから派生する事業上の変化も含めて捉えています。海は環境課題の対象であると同時に、資源供給や物流、地域経済を支える基盤でもあります。だからこそ論点は、「守るか使うか」という二項対立ではなく、「安定していると考えてきた前提が、どう変わり始めているのか」にあるかもしれません。

「環境問題」ではなく「事業の前提」として海洋を見る

海洋に関する議論では、プラスチック問題や生物多様性の損失が中心になりがちです。もちろん重要なテーマですが、それだけでは企業活動との接続は見えにくいかもしれません。

企業の側から見ると、海洋はもう少し広い意味を持っています。原材料として利用される海洋資源、国際物流を支える海上輸送、生産やインフラが集中する沿岸地域ーこれらが組み合わさることで、多くの事業の前提が成り立っています。

いま起きている変化は、その前提に「ズレ」が生じ始めていることです。比較的安定していると見られてきた海洋環境が、変動を伴うものへと少しずつ変わりつつある。その影響が、経営の足元にも及び始めているのかもしれません。気づきにくいのは、調達価格や物流コスト、規制対応といった形で、じわじわと表面化していくこともあります。

日本企業の現場で見え始めていること

こうした変化は、日本企業にとっても遠い話ではありません。

食品・外食の分野では、水産資源の変動によって、調達価格が不安定になる場面が見られます。単なるコスト変動というより、「これまでと同じ調達を続けられるのか」という問いにつながる可能性があります。

製造業では、海上輸送コストの変動や遅延が、サプライチェーン全体に影響するケースもあります。これまで比較的読みやすいものとして扱われてきた物流が、不確実な変動要素として意識される場面も増えているように見えます。

小売・ブランドの領域では、プラスチック規制や海洋への配慮に対する消費者の目も変化しつつあります。商品そのものだけでなく、調達や素材の背景までが見られる場面も出てきています。

また、沿岸部に拠点を持つ企業では、環境リスクと人材確保の課題が重なり、立地のあり方を見直す必要が生じる可能性もあります。

一見するとバラバラに見えるこれらの動きに共通しているのは、「これまでの前提が、少しずつ合わなくなってきているのではないか」という点です。

意思決定とサステナビリティ開示への影響

こうした前提のズレは、経営判断の各所にも影響を与え始めています。

調達においては、価格や品質だけでなく、「続けられるか」という視点が重要になりつつあります。物流においては、効率性の追求に加えて、不確実性をどう織り込むかが論点になるかもしれません。商品設計においても、機能やコストだけでなく、素材の選び方や環境負荷への配慮が、より重要な視点になりつつあります。

これらを十分に整理しないままにしておくと、想定外のコストや供給リスクとして、後から表面化する可能性もあります。

サステナビリティの観点からも、この問題は複数の領域と交差しています。Scope3では、原材料の調達や輸送も対象になるため、海上輸送や海洋資源に関わる変化も論点になります。また、環境変化が地域コミュニティや雇用に影響することもあり、サプライチェーン全体を見る際に見落とされやすい領域ではないでしょうか。

ISSBをはじめとするサステナビリティ開示では、事業に影響を与えるリスクや前提条件を説明することが求められています。海洋環境もまた、そうした前提の一部として語られる場面が、今後増えていく可能性があります。

事業の前提を、いま一度見直す

世界海洋デーは、「海を守ろう」と呼びかける日であると同時に、自社の事業が何の上に成り立っているのかを問い直すきっかけにもなりえます。見えにくい前提ほど、変化したときの影響は大きくなりやすいものです。

まずは、自社の調達・物流・開示が、どのような前提の上に成り立っているのかを整理してみることも、一つの出発点になるのではないでしょうか。

ニューロマジックでは、こうした事業の前提を可視化し、サステナビリティの取り組みや発信につなげる支援を行っています。

自社の場合どこから見直せばよいのか、まずは壁打ちからでもお気軽にご相談ください。

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