「ESG方針を出したものの、現場まで十分に浸透していない気がする」「研修を実施しても、継続的な行動につながりにくい」
こうした声は、日本企業に限らず、さまざまな企業で聞かれます。ニューロマジックにも、同様のご相談をいただく機会が少なくありません。一方で、海外の先進企業の中には、従業員が主体的にサステナビリティやDEIに関わり、結果として事業成果にもつながっているように見える事例もあります。
こうした違いは、どこから生まれているのでしょうか。私たちが事例を見ていく中で感じているのは、「巻き込み」を個人の意識やモチベーションだけに依存せず、仕組みとして整えている企業が比較的多いという点です。
本記事では、そうした企業に見られる共通点を整理し、日本企業でも参考にしやすい形でご紹介します。
なぜ今、「巻き込み」が重視されているのか
近年、海外では「従業員エンゲージメント」が、経営の重要な要素として扱われる場面が増えています。
GRIやCSRD(ESRS)などの国際基準でも、
- 人材・働き方
- 従業員の関与
- 組織の実行体制
といった点が、企業の取り組みを評価する文脈で語られることが多くなっています。そのため、「制度があるかどうか」だけでなく、「実際にどのように運用されているか」が、以前より重視される傾向にあると言えそうです。
Z世代の視点も無視できない要素に

とくに若い世代の中には、企業のメッセージだけでなく、
- 現場での実践状況
- 継続性
- 具体的な取り組み内容
を丁寧に見ている人も増えています。従業員が主体的に関わることで、取り組みの質が上がり、現場発のアイデアが生まれ、結果として中長期的な成果につながりやすくなります。
つまり、巻き込みのあり方は、採用やブランド評価にも、間接的に影響する可能性があるテーマと考えられます。
海外企業に見られる「巻き込み設計」の共通ポイント
業界や規模は異なっていても、比較的共通して見られる傾向があります。ここでは、代表的な5つのポイントをご紹介します。
① 目的の共有を丁寧に行う
巻き込みの第一歩として、「なぜこの取り組みを行うのか」をできるだけ分かりやすく伝えていくことは、重要なポイントの一つと考えられます。目的を軸に経営している企業の中には、入社時研修や日常のコミュニケーションを通じて、自社の目的を繰り返し共有する文化を育てているケースも見られます。
たとえばユニリーバでは、「サステナブル・リビング・プラン(USLP)」を起点に、現在は「ユニリーバ・コンパス」などの枠組みを通じて、目的を軸とした経営を進めています。入社後には、目的に関するワークショップを受ける機会が設けられており、ブランドごとにサステナビリティ目標を設定することで、事業と目的を結びつける工夫が行われています。
こうした取り組みは、理念を日常業務とつなげていく一つの方法として、私たち日本企業にとって参考になるかもしれません。そして、目的や背景がある程度共有されている組織では、現場での判断や意思決定がスムーズになりやすく、説明や調整にかかる負担が軽減されるケースも多いようです。
② 行動を「設計」する(ナッジ・行動デザイン)
大きなビジョンを掲げても、それだけで一人ひとりの行動がすぐに変わるとは限りません。多くの先進企業では、「意識を変えること」よりも、「行動しやすい環境を整えること」に重きを置いているように見られます。行動科学の考え方を取り入れた「ナッジ(そっと後押しする仕組み)」も、その一つです。
たとえば、
- 分別しやすい動線設計
- サステナビリティKPIの可視化
- ゲーム要素の導入
など、日常業務の中で自然に行動につながる工夫が行われているケースがあります。
こうした環境づくりを通じて、社員が「意識しなくても動ける状態」をつくろうとしている企業も少なくないようです。行動をあらかじめ設計しておくことで、取り組みが無理なく続きやすくなる場合もあると考えられます。
③ 現場チャンピオン制度(アンバサダー制度)
トップダウンだけで施策を進めようとすると、現場との間に距離が生まれてしまうこともあります。そこで、多くの企業では、現場の従業員を「アンバサダー」や「推進役」として位置づける仕組みを取り入れています。
このような制度では、
- 現場発での改善提案
- 取り組みの共有
- 他部署への展開
などが進みやすくなる傾向があります。小売業や食品業界などでは、サステナビリティ推進の中心となる社員を配置し、現場主導で活動を広げている例も見られます。あわせて、成果を称賛・共有する仕組みを整えている企業もあります。
こうした取り組みを通じて、「本社からの指示」ではなく、「自分たちの活動」として捉えられるようになるケースもあるようです。
④ トップの「見えるコミットメント」
経営層の姿勢や関与の度合いは、従業員の受け止め方に影響することがあります。たとえば、セールスフォースでは、CEOが定期的にESGやDEIをテーマに発信を行っています。あわせて、社内には専用のコミュニケーションチャンネルが設けられています。また、「1-1-1モデル(就業時間・製品・株式の各1%を社会貢献に充てる)」を通じて、社員の参加状況を可視化している点も特徴的です。
トップのメッセージと制度設計が組み合わさることで、取り組みが浸透しやすくなっています。他にも、役員が現場の成果をSNSなどを通じて社内外で紹介することで、取り組みへの関心を高めている企業も見られます。
こうした姿勢が継続的に示されることで、「会社として重視しているテーマである」という認識が、徐々に共有されていくのでしょう。トップの関与は、行動を後押しする一つの要素となり得ます。
⑤ KPIの透明化と評価制度への反映
取り組みを継続していくうえでは、「どのように評価されるのか」も重要な視点になります。
たとえば、シュナイダーエレクトリックでは、ESG関連のKPIを「サステナビリティ・インパクトト」として公開し、報酬制度と連動させています。また、ユニリーバでも、サステナビリティ指標を評価制度に組み込む取り組みが行われています。
このように、
- 指標の可視化
- 定期的なレビュー
- 評価との連動
を取り入れることで、取り組みが業務の一部として定着しやすくなるケースもあります。
「善意に頼る」のではなく、「評価や仕組みの中に組み込む」ことで、行動が続きやすくなる可能性があります。
自社に合った進め方を考えるために
「何から着手すればよいのか分からない」「自社に合った形にどう落とし込めばよいのか悩んでいる」と感じるケースも少なくないかもしれません。
巻き込みの設計は、一度つくって終わりではなく、試行錯誤しながら育てていくプロセスでもあります。だからこそ、自社の状況に合わせて整理し、無理のない形で進めていくことが大切だと私たちは考えています。
ニューロマジックとともに、「動く組織」を考える

私たちは、サステナビリティ推進における「巻き込みの設計」を日々の業務の中で無理なく回り続ける仕組みとして設計することを大切にしています。各社の状況に合わせて整理しながら、伴走型で支援します。
取り組みの進め方に迷われている場合や、整理から一緒に考えたい場合は、お気軽にご相談ください。
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