EcoVadisで日本企業が落としやすい6つのポイント

「環境対策もコンプライアンスもきちんとやっているのに、なぜEcoVadisのスコアが伸びないのか?」多くの日本企業が抱えるこの疑問。実は、取り組み自体の問題ではなく、「エビデンスの見せ方」に原因があることも少なくありません。

EcoVadisは世界15万社以上が利用するサステナビリティ評価プラットフォームで、環境、労働・人権、倫理、持続可能な調達の4テーマでスコアリングされます。日本企業の2024年平均スコアは50.9点と着実に改善している一方、EcoVadis社が公開する2024年地域別スコアによれば、日本企業の平均スコアはAPAC内では中位に位置し、韓国・台湾よりも低い傾向にあります。特に「倫理」が46.7点、「持続可能な調達」が41.3点と、この2つが日本の弱点テーマとして指摘されています。

日本企業に見られやすい傾向

日本企業の多くは、国内向けの内部規程や管理体制は非常にしっかりしています。しかし、以下の点で海外評価基準とのギャップが生じるケースが見られます。

  • 公開性:社内規程は充実しているが、外部公開されていない場合がある
  • KPI管理:定性的な取り組みは多いが、定量データとして示されていない場合がある
  • サプライチェーン:誓約書は取得済みだが、その後のモニタリングが十分でないケースがある
  • 倫理体制:就業規則には含まれているものの、独立した倫理プログラムとして整理されていない場合がある

こうした点に共通して見られるのは、「やっていること」と「EcoVadisの見ているポイント」との間に生じる整理や見せ方のギャップです。

まず押さえておきたいのが、EcoVadisの評価構造です。評価は以下の3層で構成されています。

  • 方針 (Policies): 25%
  • 実行 (Actions): 40%
  • 成果 (Results): 35%

中でも「実行」が40%と最も高い配分を占めている点は重要です。方針を掲げているかどうかに加えて、それを日常業務に落とし込み、継続的に運用する仕組みが整っているかが、スコアに大きく影響する傾向があります。

この評価構造を踏まえた上で、日本企業が特にスコアを落としやすいとされる6つのポイントを、順に見ていきます。

1. ポリシーはあるのに「社外から見えにくい」

よくある状況

社内規程や環境方針、コンプライアンス規程などはしっかり整備されているものの、それらが社内イントラのみに掲載され、外部から参照できない状態になっているケースが見られます。                                       海外のサプライチェーン管理では、「対外的に公開されている情報をもとに取引先を評価する」という考え方が一般的です。そのため、どれだけ内容が充実した方針であっても、外部から確認できない場合、評価の対象として十分に認識されないことがあります。

EcoVadisの評価視点

取引先やステークホルダーが参照できる「外部へ公開されている方針」が重要視されます。4テーマそれぞれに対して、署名・日付入りの公開されていることが、評価上プラスに働く傾向があります。

日本企業が陥りやすいポイント

「国内向けには十分対応している」と考えていても、海外の取引先や評価機関から見ると、取り組みの内容が十分に確認できない状態になっているケースが見られます。

また、グループ全体の方針は整備されているものの、評価対象となる法人や事業所への適用範囲が明確に示されていない場合も少なくありません。

改善の方向性

最低限の方針一式(環境、労働・人権、安全衛生、倫理、責任ある調達)を自社Webサイトで公開しましょう。評価対象の範囲を明記した方針文書を整えることが第一歩です。なお、親会社の文書でもスコアがつく場合がありますが、「対象事業所を含む」旨の記載が必要です。

2. 実行(Actions)が「単発」で終わっている

よくある状況

年1回の安全衛生教育、ハラスメント研修、監査を実施しているものの、「やりました」という報告のみにとどまり、プログラムとして整理されていないケースが見受けられます。EcoVadisでは、実行(Actions)が全体の40%と最も高い配分を占めています。単発の活動ではなく、計画→実行→評価→改善というサイクルが回っている「仕組み」が重視される傾向にあります。

EcoVadisの評価視点

教育・監査・リスクアセスメント・第三者認証など、制度化されたプロセスとして運用されているかが評価のポイントです。継続性の目安としては、年1回以上の実施が一つの基準とされています。

改善の方向性

年間計画、手順書、担当部署、対象範囲を明文化し、「プログラム」として提示しましょう。具体的には以下のような文書を整備します。

  • 年次教育カリキュラム(対象者・実施時期・内容)
  • 監査計画書(頻度・チェック項目・責任者)
  • リスクアセスメント手順書
  • 教育ログ、監査レポート、是正処置の記録

3. 成果(Results)が「感覚値」止まりでKPI化されていない

よくある状況

「災害ゼロです」「残業削減に取り組んでいます」など定性的な説明が中心で、エネルギー使用量、廃棄物量、事故件数などが数値で継続管理されていないケースがあります。成果(35%)は取り組みの効果を客観的に示す重要な要素です。定量データがなければ、どれだけ優れた方針や取り組みがあっても、その成果が十分に評価されにくくなります。

EcoVadisの評価視点

成果は、最新2年分の定量データが求められ、有効期間も2年と明確に定義されています。拠点ごとに管理が分かれており、グループ全体の状況が示せない場合、評価上の課題となることがあります。

改善の方向性

テーマごとにKPIを定義し、最低2年分のデータを整理しましょう。

KPI例

  • エネルギー原単位(kWh/製品単位)
  • CO2排出量(Scope 1, 2)
  • 廃棄物リサイクル率(%)
  • 労働災害度数率
  • 従業員教育実施率(%)

4. サプライチェーン管理が「誓約書を取って終わり」

よくある状況

取引基本契約にCSR条項を入れ、誓約書や遵守契約を取得していますが、その後のモニタリングやリスク評価は未実施なケースが見られます。誓約書は「意思表明」に過ぎず、実際にリスクが管理されているかは別問題です。EcoVadisでは、リスクの特定→評価→改善というサイクルが回っていることが評価される傾向にあります。

グローバルトレンドとEcoVadisの評価視点

持続可能な調達は世界的にもスコアが伸び悩むテーマであり、日本でも平均41.3点と伸び悩みが見られます。EcoVadisでは以下の項目が重く評価される傾向にあります。

  • サプライヤーのリスク分析(国・業界・素材別の分類)
  • 評価の実施率(%で示す必要あり)
  • 是正措置(CAP)のフォローアップ(改善要請と進捗管理)
  • 重大インシデントの管理(発生時の対応記録)
改善の方向性

国、業種、素材などによるリスク分類を行い、リスクの高いサプライヤーに対して、段階的な対応を検討することが重要です。具体的には以下のような仕組みが考えられます。

  • サプライヤーのリスクマップ作成
  • 評価実施率の目標設定と進捗管理
  • EcoVadisスコアを活用したサプライヤー評価
  • CAPの発行と改善フォロープロセス

5. 倫理・コンプライアンスが「就業規則中心」で整理されているケース

よくある状況

贈収賄、独禁法、情報セキュリティなどは就業規則に含まれていますが、独立した倫理方針やホットライン制度としては十分に整理されていないケースがあります。海外では、倫理・コンプライアンスは企業価値の根幹を成すものとして、独立したプログラムで運用されるのが標準です。就業規則の一部として扱うだけでは、実効性が伝わりにくい場合があります。

日本の現状

EcoVadisのデータでは、日本企業の「倫理」テーマ平均スコアは46.7点と、他テーマに比べて低い水準にあります。

EcoVadisの評価視点

贈収賄防止方針、コンプライアンス研修、内部通報窓口、違反時の処分プロセスなど、実効性のあるコンプライアンス体制が評価される傾向にあります。

改善の方向性

独立したCode of EthicsやAnti-Bribery Policyの策定・公開を行い、以下の要素を含む実効性のあるプログラムとして整理することが考えられます。

  • 倫理方針の策定と公開
  • 定期的なコンプライアンス研修(実施記録含む)
  • 内部通報窓口(外部からもアクセス可能)
  • 調査プロセスと統計的な結果報告

6. 書類の「形式」で減点されている

よくある状況

ドキュメントは存在するものの、日付がない、古い、会社名やロゴがない、親会社の資料だが評価対象エンティティをカバーしている旨の記載がないといった状態です。EcoVadisは文書の「正当性」と「追跡可能性」を重視します。形式が整っていない文書は、実際の運用との整合性が疑われ、信頼性が十分に伝わらない場合があります。

評価ルールと注意点
  • ポリシーや取り組みの有効期間は8年、KPIは2年と明確に定義
  • 改定履歴がなくても、8年以内であれば有効
  • 「EcoVadis対応のみを目的とした資料」は信頼性の観点から評価されにくい傾向があります。
却下されやすい証拠の例

以下のような文書は提出しても却下される可能性が高いため注意が必要です。

  • 社外公開されていない内部文書
  • 改定日・署名・ロゴがない文書
  • スキャンが不鮮明な資料
  • Excelの途中データ(最終版でない)
  • 業界団体の一般文書をそのまま転用
改善の方向性

既存資料に日付、改定履歴、対象組織を明記しましょう。EcoVadis用に「だけ」作るのではなく、実際のマネジメントに使う文書との整合性を取ることが重要です。

チェックリスト:

□ 会社名・ロゴが入っているか

□ 発行日・改定日が明記されているか

□ 署名者(責任者)が明記されているか

□ 評価対象エンティティの適用範囲が明確か

□ 最終版として承認された文書か

まとめ:スコアアップの鍵は「取り組み」ではなく「見せ方の構造」

日本企業は環境など一部テーマで世界水準の取り組みを進めていますが、方針・実行・成果の観点でエビデンスを整理しきれていない場合、スコアが伸びにくい状況にあります。

特に重要なのは、実行(40%)が最も高い配分である点です。方針と結果だけでなく、それらをつなぐ「実行の仕組み」が制度化されているかが、スコアの分かれ目となります。

重要なのは、どのテーマで、方針・実行・成果のどこに整理の余地があるのかを分解して確認することです。これが効率的なスコア改善につながると考えられます。

「真面目に取り組んでいるのに評価されない」と感じている企業こそ、この6つのポイントをチェックしてみてください。意外な穴が見つかるはずです。

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