アイデア出し、プロトタイプ、検証をたった一週間で済ますことができるデザインスプリントはとても画期的。ただ、スプリントの後に何を得られるのか。どうすればうまく今後に活かせるのか。と疑問に思ったことはありませんか?参加者の期待にきちんと応え、チームの勢いを保つためには、デザインスプリント後にするべきことがいくつかあります。
この記事では、デザインスプリントやワークショップのフォローアップに有効な3つの取り組みをご紹介します。
ポイントは、スプリント後にいい雰囲気を作ること。4、5日間で成し遂げられた成果と、みんなの努力を讃え合いましょう!
デザインスプリントのフォローアップ
デザインスプリント中はクリエイティブで活気のある雰囲気も、一旦終わると日常に戻り、それまでのプロセスや努力を意識しながら仕事を続けることはなかなか難しいものです。
ここで重要なのは、スプリントで得た経験を組織の中で浸透させていくこと。まずはデザインスプリントのプロセスを振り返り、フィードバックをもらい、結果を整理しましょう。そうすることで、作成したプロトタイプの理解を深めることになります。またスプリントが組織内で普及していない場合は、次のスプリントを実施しやすくなることにも繋がります。
では実際に、デザインスプリントの実施後、その勢いを失わないために次の3つのことをやってみましょう。
1. 結果のまとめを作成する:ステークホルダーの賛同を得る
デザインスプリントを終えたら、スプリントチーム(デザインスプリントに参加したメンバー)はユーザビリティ調査で得たフィードバックをどう活用するか、次のステップについて話し合う必要があります。また、デザインスプリントに参加できなかったステークホルダーにも結果を知らせるのも重要なことの一つです。結果を共有することで、スプリントの方法論が社内で認識を広め、今後さらに活用の機会を得られるかもしれません。
上記のような場面で、デザインスプリントの結果をわかりやすく示すためにスプリントの結果をまとめた「スプリント事後レポート」を作成しましょう。このレポートでは、デザインスプリント中の様子を伝える写真に加えて、スプリントゴールやドット投票結果を記録するようにしています。
スプリント事後レポートの内容例
- 写真/スクリーンショット
- 投票結果
- スプリントゴール
- 様々なアクティビティの結果(キャンバス)
- ユーザーテストのフィードバック
レポートの内容は目的やスプリントあるいはワークショップの種類によって決まります。例えば、サービスデザインスプリントでは、ユーザーインタビュー(プロトタイプの前に行うもので、検証のためのユーザーテストではない)を行うため、レポートにユーザーインタビューの結果も追加します。

miroやMURALなどのオンラインホワイトボードを利用してデザインスプリントを行うと、その後のレポート作成時に便利です。付箋上のコメントが読みやすく、書いたものの整理もしやすいですよ。
結果を要約しておくと、次の段階へと移る前、再検討する際に参考にできるだけでなく、チームがステークホルダーを説得するのにも役立ちます。スプリントに参加していなかった他の社員や関係者も、すぐにデザインスプリントの価値を理解することができるのです。
2. ユーザーテストのフィードバックを丁寧に確認する:次のステップを決める
プロトタイピングとユーザーテストは、初日に決めたゴールとスプリントクエスチョンに対し、実際のユーザーからフィードバックを得るために行われます。ここで得たフィードバックが、今後プロジェクトをどのようにして進めていくべきかの指針になるというわけです。そのため、デザインスプリントに参加したメンバーで結果を振り返り、議論することが重要です。
ユーザーテストの結果は、それほど予想と変わらないということもあるかもしれません。それでも、立てた仮説を確かめることで、自信を持って前に進むことができるほか、組織のリソースを無駄にせず活用し、更なる開発に励んでいくことができます。
また検証の結果、あるアイデアがユーザーにとって好ましいものではなかったとしても、全く問題ありません!たった5日間で何ヶ月、いや何年もの年月、労力と人件費を無駄にせずに済んだということになりますからね。このようにして、デザインスプリントでの「失敗」が大きな価値を持つこともあるのです。

3. 振り返りと反省:実践を通して学ぶ
デザインスプリントでは基本的に定められたプロセスを行っていきますが、現実にはあらゆる場面に適しているような唯一無二のプロセスはありません。実施したプロセスが有効だったのかどうか、毎回検討し、調整を加えていくことはプロダクトやサービス開発のチームが大事にすべきことです。
参加メンバーに5日間が有意義だと感じてもらい、デザインスプリントの恩恵を最大限に生かしてもらうため、ニューロマジックでは、デザインスプリント・リフレクション・テンプレートを使い、参加者にスプリントで大事だと思った場面や難しかったこと、課題と感じたことを記録してもらっています。

デザインスプリント・リフレクションテンプレートには以下の項目が含まれています。
- 目標:時間が経つにつれ、忘れてしまいがちな目的。はっきりと記録しておきましょう。
- ハイライト:重要な出来事を記録しておくことは、チームのみならず自分自身にとっても重要です。ここでは、プロセスのどの部分が知識や理解を豊かにしてくれたのかを記します。
- 難しさ:プロトタイプやアイデアは繰り返し使えません。それはスプリントのプロセスも同様です。今一度、プロセスのどの部分を改善すべきか書いてみましょう。
- 学び:うまくいったこと、いかなかったことを振り返った後はこのプロセスで何を学ぶことができたのか記録しましょう。
- 成果物:ここでは、スプリントの中で作成した結果を書きましょう。ユーザージャーニーマップ、共感マップ、プロトタイプ、ペルソナなどが該当します。
- 次のステップ:デザインスプリント終了後、ほかのステークホルダーと話し合った上で、プロジェクトを前進させるために必要なステップを記録しておきます。
- 疑問:デザインスプリントの後、何か疑問に残っていることは?デザインスプリントで行ったエクササイズで、もっと深く知っておきたいことは?頭に浮かぶ疑問を書き出してもらい、次のスプリントまでにチームで確認しておきましょう。
これら全ての情報は一箇所にまとめ、すぐに参照できるようにしましょう!
スプリントの終了後、プロジェクトの進行に関して総意を得る必要がある場合は、その目的に関わらず、このデザインスプリント・リフレクション・テンプレートが役に立ちます。この振り返りのプロセスはチームや個人の成長だけでなく、デザインスプリントで何が行われたのかを社内でやり取りするのにも便利です。また、このリフレクションテンプレートはデザインスプリントのみならず、あらゆるワークショップの振り返りにも応用が可能です。
リフレクションテンプレートにご関心のある方は、こちらからダウンロードいただけます。デザインスプリントの後にぜひご活用ください!
デザインスプリント・リフレクション・テンプレートをダウンロードする:

林 静瑩
サービスデザイナー
台湾出身。2019年ニューロマジック入社。前職で培ったマーケティング領域での経験を活かし、現在はデザインスプリントのメニュー設計やファシリテーションを行う。中国語、英語、日本語を巧みに操るトリリンガル。
