AI時代のサイトリニューアル(後編) ― 接点の役割を定義し、ボトルネックに振り切る

前編では、サイトリニューアルの最初の問いは「どんなサイトにするか」ではなく「どの経営課題を解くのか」だ、というお話をしました。そして、AIが下げたのは「あればいい」という制作の基準線であって、勝負はROI(投資利益率) I の節約から R の設計へ移った、と。

では、その R は、どうやって設計すればよいのでしょう。後編は、ここから始めたいと思います。

前編:AI時代のサイトリニューアル ―「作り直す」前に、どの経営課題を解くのかを問う

接点の役割とは、「状態を動かす」こと

その R を動かすレバーは何でしょう。タッチポイントの役割を定義することです。ただ、その「役割」とは何なのか。ここをきちんと決めておきたいと思います。

僕らは、接点の役割を「誰を、どの状態から、どの状態へ動かすのか」と定義しています。つまり、状態の遷移です。考えてみれば、経営課題というのは、必ず旅程のどこかで「状態が動いていない」という形で顔を出しますよね。知られていない。候補に残らない。検討はされるけれど、決め手を欠く。応募まで至らない。その動いていない一点が、ボトルネックです。接点の役割とは、そのボトルネックの状態を動かすこと。それ以上でも、それ以下でもありません。

こう定義すると、R の中身がはっきりします。R の大きさは、ボトルネックの状態をどれだけ動かせたか、で決まります。逆に言えば、ボトルネックでないところをいくら磨いても、R は増えないのです。細くなっている一箇所が全体の流量を決めているのに、もともと太い管をさらに太くしても、流れる量は変わりませんよね。それと同じことです。

では、その「状態」は、何で書けばよいのでしょう。「できる/できない」だけでは足りません。人は、行動の可否だけで動くわけではないからです。何を知っていて、何を信じていて、どう感じているか。そこまで書いて、はじめて状態を捉えたことになります。たとえば「知られていない」という状態。AI検索の中で引用されなければ、そもそも知られる機会そのものが生まれません。GEO、つまり生成AIに引用されやすくするための最適化は、この状態を動かすための手立ての一つ、という位置づけになります。

一方で、当社の経験では、BtoBのボトルネックは、もっと奥にあることが少なくありません。情報は足りている。機能も問題ない。それでも「この会社に任せて大丈夫だ」とは、思えていない。この状態が動かないかぎり、指名はされないのです。そしてここを動かすのは、ページを一枚足すことではなく、体験そのものの設計です。

状態なんて測れないよ、と思われるかもしれません。でも、状態は行動に現れます。知られているかは指名検索に、信じられているかは直接流入や再訪に、評判はレビューや外部での言及に、顔を出す。日常はこの行動の目印で追いかけ、リニューアルの前後という節目では、「ふさわしいと思えているか」という認識そのものを、サーベイで直接測る。ここまで役割を言葉にできると、一般的なリニューアルの手順論とは、意味あいがまるで変わってきます。

「ふさわしさ」とは、配分の判断である

当社は長いあいだ、「ふさわしさ」をキーワードに仕事をしてきました。AIの時代に、この言葉の意味はさらに重くなっています。ふさわしさとは、「経営課題 ⇄ 接点に持たせた役割 ⇄ 実装」、この三つが一致している度合いのことです。ここがズレていれば、どれだけ最適化しても R は経営に効かない。ぴたりと合っていれば、小さな投資で大きなリターンが生まれます。

AIで、作れるものの幅が実質無限に広がりました。だからこそ皮肉なことに、「どこに振り切り、どこを捨てるか」の判断が、いちばんの希少価値になる。すべての接点を満点に仕上げようとするのではなく、ボトルネックになっている一点に、大胆に張る。そして、そのボトルネックがサイトの外にあるのなら、いちばんふさわしい答えは「この課題なら、サイトより先に別の接点に投資すべきですよ」になります。“作らない”という判断ができること。これこそ、僕らがいちばん大事にしたい価値です。

R を設計する五つの手順

では、実際に R を設計するとき、何から手をつければよいのでしょう。当社では、おおむね五つの順番で進めています。「制作先行」から「役割定義先行」へ、という並び替えですね。

一つ目は、経営課題を、状態の言葉に翻訳することです。「新規問い合わせを増やしたい」のままでは設計できません。誰の、どの状態が、どうなっていれば解けたと言えるのか。そこまで降ろしてはじめて、測れる対象になります。

二つ目は、旅程を並べて、どこで状態が止まっているかを探すこと。知られていないのか。知られてはいるけれど、候補に残らないのか。候補には残るけれど、信じ切れていないのか。ここで見つけた一点が、ボトルネックです。この工程には「そもそもサイトに投資すべきか」という問いも含まれます。ボトルネックが外にあれば、答えは「今回はサイトではない」になります。

三つ目は、その一点に対して、接点の役割を定義すること。「誰を、どの状態から、どの状態へ」を一文で書き切る。この一文が書けなければ、そのページは作らなくていい、という判定にも使えます。

四つ目は、配分を決めること。すべてを満点にするのではなく、その一点に予算と時間を寄せる。多くの場合、全面的に作り直す必要はありません。効くところからテコ入れするほうが、同じ予算で R は大きくなります。

五つ目は、状態が動いたかを測ること。知られているかは指名検索、信じられているかは直接流入や再訪、という具合に、二つ目で置いた状態に対応する目印を先に決めておく。ここが次のサイクルの出発点になります。

逆に言えば、この五つを飛ばして「とりあえず全ページを作り直す」に入ると、何が動いて何が動かなかったのか、あとから説明できなくなるのです。

なお、各工程の具体的なやり方は、別の記事にゆずります。AI検索時代の変化とGEO/LLMOの基本、作り直さない優先順位、情報設計(IA)とUXの見直し、表示速度や構造化データという技術の土台。この二回の記事は、それらを「なぜやるのか」で束ねる地図だと思っていただければと思います。

なぜ、体験のエージェンシーなのか

ここまでお話ししてきたことは、経営課題から逆算して役割を定義し、ふさわしい配分を判断し、設計から実装、運用までを一本で横断できて、はじめて成り立ちます。作ること単体ではなく、この一連を引き受けられるかどうか。そこが肝だと思っています。当社には、対象スコープのステークホルダー、つまり利害関係者の体験を評価して、問題を特定し、課題を定義していく、Experience Assessment という横串の診断方法論があります。「まずサイトを診る」道具ではありません。「経営課題に対して、どの接点に、どれだけ振るべきか」を診るための道具です。

上流に振り切るための制作・運用の効率は、当社が全社横断で進めるAI活用が支えています。AIとサービスデザインを掛け合わせ、体制はコンパクトに、品質はむしろ上がり、対応できる領域も広がって、従来のコストで届ける価値は、体感で1.2〜1.5倍になっています。制作が安くなった分を、そのまま役割定義と、ふさわしい配分に回していく。これが、体験のエージェンシー、エクスペリエンス・エージェンシーとしての当社の立ち位置です。

まず、現状を測る

最後に、一つだけご提案です。作り直す前に、自社の経営課題に対して、旅程のどこがボトルネックになっていて、ウェブサイトという接点がその状態をどれだけ動かせているのかを、いちど測ってみること。当社では、その接点配分とリターンを測る診断をご用意しています。まずは、AI検索時代に向けたGEO観点の現状チェックからでも、かまいません。「作り直すべきか」を考える前に、「何を、どの接点で解くべきか」を、ぜひ一緒に見える化してみませんか。

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また、当社ではAIによる無料の「LLMO簡易診断」をご提供しております。ぜひお気軽にご活用ください。

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