キノコの棺から、魚のすみかになる埋葬まで。世界で変わる「人生の締めくくり方」

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サステナブルへの変革は、さまざまな領域で広がっています。葬儀や埋葬の方法も、その例外ではありません。自然に還りやすい素材を使った埋葬、遺体そのものを土に還す取り組み、そして埋葬地を自然環境の保全につなげる仕組み――こうした環境に優しいアプローチが、世界各国で注目を集めています。

自然に還る「埋葬」

自然埋葬(Natural Burial)は、遺体を自然に戻すことを前提とした埋葬方法です。防腐処理を行わず、生分解性の棺やシュラウド(遺体を包む布)を使う方法などがあります。

欧米で一般的な土に埋葬する「土葬」は、死後の身体をそのまま自然に還す方法のように思われるかもしれません。しかし、一般的な埋葬では、防腐処理を施した遺体を棺に納めて埋葬するため、必ずしもそのまま自然や土壌へと還るわけではありません。

ニュージーランドのウェリントン市にあるマカラ墓地には、自然葬墓地が設けられています。ここでは、自然の分解プロセスを促すため、埋葬区画は土壌の働きが活発な層までしか掘り下げず、故人には防腐処理を施さず、未処理の木材で作られた棺やシュラウドに納めて埋葬します。埋葬後は、有機物の分解が進む土壌で区画を埋め戻し、その上に地域に自生する在来樹木を植えます。遺体に含まれる栄養分や物質は、時間をかけて周囲の土壌や植物に取り込まれていきます。最終的には、この墓地を在来の自然林へと戻し、埋葬された人々の生きた記念碑であると同時に、在来の動植物の生息地となり、家族や友人が訪れる場所とすることを目指しています(参照元:Wellington City Council)。

そのほかにも、棺にキノコ由来の素材を使う取り組みもあります。オランダのLoop Biotechが開発した「Loop Living Cocoon」は、地元のキノコとアップサイクルされたヘンプ繊維から作られた棺です。オランダのデルフトで7日間かけて育てられ、自然葬、従来型の埋葬、火葬に対応しています。また、理想的な条件では45日以内に生分解するとされています(参照元:Loop Biotech)。

自然に還る「新しい葬送」

埋葬方法だけでなく、死後の身体を自然に還すための新しい方法も登場しています。

注目されているのが、「自然有機還元(Natural Organic Reduction)」です。これは、遺体を木材チップなどの有機物とともに専用の容器に入れ、管理された環境で分解し、土壌に還元できる有機物へと変える方法です。2019年、米国ワシントン州では、米国で初めて自然有機還元を認める法案が州議会を通過し、2020年に施行されました(参照元:The Washington Post)。

もう1つが、「水火葬」とも呼ばれる「アルカリ加水分解」です。水とアルカリ性の薬剤を用い、熱などを加えて身体を分解します。火を使って燃焼させる従来の火葬とは異なり、水を用いた化学的な反応によって分解を進めます。処理後には骨が残り、火葬後と同様に遺族へ返却されます。すでに米国28州、カナダ、アイルランド、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドで利用されており、この方法では大気中に直接、有害な排出物が出ないほか、棺を必要としないため、使い捨ての棺の使用を減らせる可能性も期待されています。2026年からは、スコットランドでもアルカリ加水分解を認める規則が施行され、英国で初めてこの方法を合法化した地域となりました(参照元:The Guardian)。

自然を守る「墓地」

埋葬方法だけでなく、埋葬地となる土地そのものを守るという考え方も広がっています。「保全型埋葬(Conservation Burial)」は、自然埋葬に土地保全を組み合わせる方法です。埋葬地となる土地を法的に保護し、土地の保全や生態系の修復などを行います。

その事例の一つが、米国テネシー州にある保全型埋葬地「ラークスパー・コンサベーション・アット・テイラー・ホロウ」です。この埋葬地を運営する非営利団体「ラークスパー・コンサベーション」は、2017年にテイラー・ホロウに土地を取得し、自然埋葬地を設立しました。翌2018年には、自然保護団体ネイチャー・コンサーバンシーにその土地の保全地役権を寄付しました。これにより、その土地には開発を恒久的に防ぐための法的な仕組みが設けられています(参照元:The Nature Conservancy)。ラークスパーでは、在来種の植栽、生態系の修復、外来種の除去など、土地の保全や管理にも取り組んでいます(参照元:Larkspur)。

遺灰を自然に生かす

火葬後の遺灰を、植物の生育や海の環境に活用する取り組みも生まれています。

スペインで生まれたBios Urnは、遺灰と植物を一緒に土に戻すための生分解性の容器です。上下2つのカプセルに分かれており、下部に遺灰、上部に種子や苗木を入れて使用します。2001年に始まり、現在は50カ国以上で使われています。(参照元:Bios)

海に目を向けると、火葬後の遺灰を人工礁に組み込むEternal Reefsがあります。米国では、遺灰を専用のコンクリートに混ぜて人工礁の形に成形し、許可を受けた海中のサイトに設置。人工礁は魚などの海洋生物の生息場所として機能します。2023年時点で、米国7州の沿岸部にある約25カ所に、2,500以上が設置されています。(参照元:Eternal Reefs)

サステナブルな葬送には1つの決まった方法があるわけではありません。自然に還りやすい素材を使って埋葬する、遺体を分解して土壌へ還す、埋葬地となる土地を保全する、あるいは火葬後の遺灰を植物や人工礁に組み込むなど、さまざまな方法があります。これまで当たり前とされてきた葬送の形に加えて、自然や環境との関わり方を考えた新たな選択肢が生まれているのです。