【その一言が企業価値を下げる】 サステナビリティ表現リスクとは

ほんの一言が、信頼を左右することがあります。

サステナビリティ発信は、「やらないリスク」だけでなく、「言い過ぎによるリスク」にも注意が必要な時代になってきています。なぜ今「表現リスク」が経営課題になりつつあるのでしょうか。

環境配慮に関する表示は、単なるマーケティング表現にとどまらず、法務や経営にも関わるテーマとして認識されつつあります。ESG評価機関は「実態と表現の整合性」を重視する傾向があり、投資家や規制当局、メディアによるチェックも年々厳しさを増しています。

一つの表現が誤解を招いた場合、評判や信頼だけでなく企業評価や資金調達環境にも影響する可能性がある点には、留意が必要です。

EUと日本における最新動向

欧州では、環境に関する表現に対して規制の整備が進んでいます。

・EU Green Claims Directive /グリーンクレーム指令(審議中)
    科学的根拠や第三者による検証が求められる方向性

・Empowering Consumers Directive / 消費者権利強化(成立済・EU各国で制度反映中)
 環境に関する曖昧表現・誤解を招く表示を減らし、消費者の判断を守る仕組み

 ・CSRD × ESRS
 開示内容の具体性(数値開示)や、一貫性への要求の高まり

EUでは、いわゆる「主張には裏付けが求められる」という考え方が、制度として整理されつつあります。

日本においても、「ガイドラインベース」だったものが「実務上の要請」へと、水準が徐々に高まってきています。

① 消費者庁:景品表示法の運用強化
・環境配慮表示の不当表示監視強化
・「合理的根拠」の提示義務

② 環境省:環境表示ガイドライン改訂(最新版)
・ライフサイクル配慮の明確化
・曖昧表現の注意喚起

③ 経産省:GX推進法・トランジション関連開示
・移行計画の具体性要求
・実行可能性の検証

④ SSBJ(サステナビリティ基準委員会/ISSB基準の国内策定機関)
・ISSB準拠基準策定
・将来的な保証・監査接続

つまり、日本でも「言い切り表現」はリスクになり得るため、一定の慎重さが求められると考えられます。

1ワードで評価が変わることも

サステナビリティに関する評価は「意図」よりも「表現の仕方」によって受け取られることが少なくありません。

・ESG評価機関
・行政機関                                     ・投資家
・メディア

これらのステークホルダーは、企業が「何をしているか」と同時に、「どのように説明しているか」を見ています。同じ取り組みでも、「表現の仕方」次第で評価に差が生じる可能性があります。

どれだけ誠実に取り組んでいても、表現が曖昧であれば、評価リスクが生じます。

よく見られる注意が必要な表現

以下のような表現は、各国のガイドラインでも問題視されています。

  • 「環境に優しい」
    → 曖昧で解釈の幅が広く、具体性に欠ける可能性
  • 「100%サステナブル」
    → 立証不能や対象範囲が不明確になりやすい
  • 「業界最高水準の環境性能」
    → 比較根拠の提示が求められる場合がある
  • 「カーボンニュートラル商品」
    → 対象範囲の明示が重要

いずれも意図としてはポジティブな表現ですが、条件や根拠が十分に示されていない場合、誤解を招くリスクがあります。行政機関や消費者団体からは「根拠不明確」「誇大表現」として指摘される場合もあります。

実際に起きている事例

たとえば消費者庁は2022年12月、「生分解性」「環境に配慮」等をうたったカトラリー・ストロー・カップ等の表示について、景品表示法(優良誤認)に該当するとして、販売事業者2社に措置命令を出しています。表示内容が、実際の性質・性能よりも著しく優良であると誤認させるおそれがある、という判断です。

これは「悪質な虚偽」というより、「曖昧な表現(条件や範囲が十分に説明されていなかった)」が問題視された事例です。

ポジティブな表現であっても、
・どのような条件で
・どの範囲において
・どの程度実現されているのか

が明確でない場合、注意が必要です。

なぜリスクになり得るのか:国際ガイドラインの構造

環境主張は、主に以下の3つの観点で評価されるとされています。

① 根拠(Substantiation)

  • 科学的証拠があるか
  • 第三者検証可能か

主張には、データやエビデンスの裏付けが必要です。「環境に優しい」という表現は、何をもって「優しい」のかが不明確なため、根拠不足と見なされます。

② 明確性(Clarity)

  • 誰が見ても誤解が生じにくいか。
  • 範囲が明確か

曖昧な表現は避けるべきとされています。「100%サステナブル」は、何が100%なのか(原材料?製造過程?輸送?)が不明確です。

③ 範囲(Life-cycle)

  • どのプロセスまでを対象としているか。(製造だけか?廃棄まで含むか?)

製品やサービスの環境影響は、製造から廃棄までの全体で評価されるべきです。「カーボンニュートラル」と謳っても、スコープ3を含めていない場合、不完全な主張と見なされます。

「表現チェック」が企業価値に直結する

表現が曖昧な企業は、内部統制の不透明さとして受け取られることもあります。

  • レピュテーションリスク回避
  • 景表法リスク回避
  • ESG評価向上
  • 投資家信頼確保

これらは、それぞれ個別のテーマのように見えますが、いずれも「情報の透明性」と「説明の一貫性」によって支えられています。

サステナビリティに関する取り組みそのものだけでなく、それをどのように表現し、どの粒度で開示しているかが、企業の統制レベルや経営姿勢を示すシグナルとして受け取られる場面も増えています。

そのため、表現の精度を高めることは、単なる広報上の工夫ではなく、結果として企業価値の毀損リスクを抑え、信頼性の向上につながる可能性があります。

表現を「リスク」から「価値」へ

ニューロマジックでは、グリーンウォッシュリスクを回避するための表現チェックと、サステナビリティ情報開示の支援を行っています。                   

 ・表現リスク診断フレーム
・3軸チェック(根拠/明確性/範囲)
・開示整合性チェック(Web × 統合報告 × IR資料)
・社内承認フロー設計

表現は「言葉の問題」ではなく「マネジメント構造の問題」と捉えます。
ニューロマジックは、文言だけでなくプロセスまで設計します。

お気軽にご相談ください。

※こちらのブログ内容に関するご相談は、上記のお問い合わせフォームから「その他」をお選びの上、ご相談ください。