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デザインスプリント入門 – 今、話題のサービス開発法

   

サービスやプロダクトの開発やデザインの分野でしばしば耳にする「デザインスプリント」。会社でデザインスプリントを実施してみたい方、もっと良く知りたい方にオススメの記事です。

目次

デザインスプリントとは?

 

デザインスプリントの生みの親、Jake Knappは著書「Sprint」の中で、デザインスプリント(略称:スプリント)をこのように定義しています。

The sprint is a five-day process for answering critical business questions through design, prototyping, and testing ideas with customers.

デザインスプリントとは、デザイン、プロトタイピング、ユーザーテストを通じ、ビジネス上の問題の答えを導き出す5日間のプロセスです。

デザインスプリントは、プロダクトやサービスの開発を効率よく進めるために考案されたワークショップ形式のプロセスです。このプロセスを通じて、リスクとコストを最小限に抑えながら、アイデア出しからユーザーテストまでをかなり短い期間で実行することが可能になります。企業が新しいサービスやプロダクトの開発や改善を行うとき、まずアイデアを出し、検討を重ね、開発し、ローンチし、その後にデータを集めて改善をしていく…という流れが考えられますが、このプロセスには多大な時間がかかってしまうことがしばしばです。開発チームが実際にローンチする直前になってから、そのプロダクトやサービスが市場に合っていないと気づき、最初から作り直し…なんてなってしまうことも少なくありません。こうすると、多大な資金と時間がかかってしまうことになります。

デザインスプリントは、このような問題を解決するために開発されました。近年では、デザインスプリントの成果が評価され、Booking.com、Facebook、Spotifyなど、多くの有名企業がこのプロセスを社内に導入しています。

ニューロマジックでは、2つのデザインスプリントを提供しています。1つは多くの方がご存知のGoogle Venturesによるデザインスプリント、もう1つは「サービスデザインスプリント」です。これら2つの基本的な概念は同じですが、それぞれに異なる特徴や、より導入するのに効果的なタイミングがあります。こちらの記事「サービスデザインスプリントとは?デザインスプリント との違い」では、これらの違いを解説しています。

デザインスプリント プロセス

 

今回紹介するデザインスプリントは、以下のような5日間のプロセスになっています。

Day1|Understand & Map 状況を理解し、問題点を特定する

1日目には、データを収集し、ユーザージャーニーを視覚化します。すべてのメンバーがプロジェクトについて共通認識を持っていることを確認し、問題を特定してプロジェクトの方向性を判断していく大事な初日です。

Day2|Diverge: Sketch Solutions アイデアの発散:解決案を書き出す

2日目には、参加者全員でブレーンストーミングを行い、市場に出回っている既存のサービスや製品から役立ちそうなケースを見つけ、新しいアイデアを思いつく限り書き出してみます。順に決められたアクティビティをこなしていくことで、参加者は各自のアイデアをブラッシュアップし、1日の終わりにはより詳細まで練られた解決策(アイデア)を考え出すことができます。

Day3| Decide on Solutions 解決策を決定する

3日目には意思決定段階に入ります。デザインスプリントのメンバーは、話し合いと投票のプロセスを通じて、検証したい解決策(アイデア)を1つに絞ってよりスムーズにプロトタイプ作成が行えるように、ストーリーボードを作ります。

通常の会議やプロセスでは、議論を続けて埒があかないこともありますよね。デザインスプリントでは構造化されたプロセス、個人での作業時間、時間制限のあるディスカッションを行うため、最終的な決定をより迅速かつ思い切りよく行うことができます

Day4|Prototype プロトタイプ制作

4日目には、デザインスプリントのメンバーが作業を分担し、ストーリーボードに沿って、検証したい解決策のプロトタイプを作成します。

従来の製品開発プロセスでは、プロトタイプ制作において、完璧なプロトタイプ、または実用最小限の製品(MVP)を目指そうと考えるかもしれません。ただし、デザインスプリントの本来の目的は仮説を短時間で検証することなので、完璧なものを目指す必要はありません。ユーザーテスト実施のために必要な、現実性とスピードを重視しましょう。

Day5|Test ユーザーテスト

5日目には5人のユーザーを招待し、プロトタイプを検証します。ここでは、創出した解決策が実際に効果的かどうかを確認します。結果を参照することで、チームはそのまま進めるべきか、あるいは調整を加えるべきかを判断することができます。こうしてプロジェクトの方向性を確かめていきます。

5人のユーザーを検証に招く理由は、一般的に、ユーザー調査を行う際、同様の行動パターンを見るには最低約5人の被験者が必要になることが研究で示されているからです。

デザインスプリントは一般的に5日間のプロセスが公表されていますが、状況に応じて各プロセスにかける時間を調整し、4、5日間で一通り終えることもできます。デザインスプリントについては、書籍やオンライン上の情報でも詳しく知ることができます。各プロセスについての説明や、ツールキットも見つけることができますので、気になる方はぜひご参照を。おすすめは次の3つです。

  • The Design Sprint :Google Venturesが立ち上げた「The Design Sprint」の公式ウェブサイト。スプリントにおける1日ごとの確認項目がまとめられていたり、YouTube上では説明ビデオが公開されています。必要な情報を体系的に見つけるのに役立つサイトです。 (英語のみ)
  • Design Sprint : Googleが立ち上げたデザインスプリントの公式サイト。アイスブレイクからプロトタイプ検証まで、多くの便利なツールキットとケーススタディがあります。(英語のみ)
  • Workshopper : ベルリンを拠点とするプロダクトデザイン・コンサルティング会社のAJ&Smartが運営するウェブサイト。ブログやYouTubeチャンネルには参考になるリソースが多くあります。また、オンラインワークショップの実施方法に関するヒントも得ることができますよ。 AJ&Smartの創設者へのインタビューはこちら:「デザインスプリントの先駆者 AJ&Smart のCEO、Jonathanへインタビュー <前編>」

どんな時にデザインスプリントを使うべき?

 

デザインスプリントプロセスは、基本的にはあらゆる組織と企業に適用できます。デザインスプリントは、対処しなければならない重要な問題に直面したとき、プロジェクトが停滞してこれ以上進まないように感じるとき、またチームが問題に遭遇したものの明確な解決策が見当たらないとき、などに有効です。

具体的に例を挙げると、次のような場面で役に立ちます。

デザインスプリントが役に立つシチュエーション

  • 新しいプロジェクトの実現可能性を検証したい
  • 製品、サービスの新規開発に取り掛かりたい
  • 製品の特定の機能を改善したい
  • 実用最小限の製品(MVP)の開発に向けた方向性を明らかにしたい
  • 新しいターゲットを対象に検証したい

ただし、デザインスプリントですべての問題を解決できるとは限りません。特に次のような状況では、デザインスプリントはあまり効果的ではないかもしれません。

デザインスプリントが適さないシチュエーション

  • 複雑な製品やサービスを一度で改善したいと考えている場合。複雑な製品またはサービスには、検討すべき様々な側面があります。こうした複雑なプロダクトやサービスを一気に改善したいと考えていても、残念ながらデザインスプリントには向いていません。デザインスプリントの強みは、特定された問題に対して明確な解決策を見つけることにありますから、まずは焦点を絞ってから取り組みましょう。
  • 複数の仮説を同時に検証しようとしている場合。デザインスプリントは、1週間で1つの問題について対処するための手法なので、複数の仮説を検証することは困難です。
  • 何を解決しようとしているか詳しく理解できていない、そもそも問題を正確に把握できていない場合。デザインスプリントは問題に対して、解決策を考え出すために用いられる手法です。問題を把握できていない場合は、スプリントを始まる前にそれを定義づけする時間を設け、あらかじめ課題を明確化しましょう。
  • 既にチームが実行すべき解決策や、作るべきものがわかっている場合。このようなとき、デザインスプリントに5日間もの時間をかける必要はないかもしれません。
  • デザインスプリントの結果をサポートするためのフォローアップ計画やリソースがない場合。十分なサポートが無いと、デザインスプリントの1週間を無駄にすることになりかねません。
  • 製品やサービスの小さな機能のみを改善したい場合。 Design Sprintは、一般的な製品開発や改善プロセスに取って代わることはできません。重要な質問に答えたり、プロジェクトの方向性を確立したりする必要がある場合に使いましょう

デザインスプリントは、便利な手法といえど、あらゆる場面で有効な万能薬ではありません。デザインスプリントだけでは新しい製品やサービスを開発することはできませんが、他のデザインプロセスとうまく組み合わせることができれば、デザインスプリントの効果を大幅に高めることができますよ。

デザインスプリントの特徴

 

1. Time-boxed (タイムボックス方式):

デザインスプリントでは、タイムラインが細かく決まっていて、各ステップに必要な時間が事前に設定されています。このようにする理由は、きりのない議論を避けることに加えて、参加者が時間の制約を意識してより密度の濃い議論が展開される可能性が高いからです。ここでは、アイデアを実装するかどうかを心配するのではなく、それぞれのアイデアを自由に共有することがポイントです。共有するのをためらうようなアイデアが、実は最も優れたアイデアかもしれません!

2. Together, alone (個人ワークとチームワーク) :

 

デザインスプリントでは、チームでの議論に入る前に、独立して宿題に取り組む時間があります。チームでの議論だけに基づいて進めると、発言権が一部に偏りやすく、良いアイデアが失われてしまう可能性があります。個人ワークを通じて、参加者全員が平等にアイデアを出し、より良い解決策を検討することができます。

3. Don’t rely on creativity(クリエイティビティが全てじゃない):

「デザイン」という言葉を聞くとクリエイティブな人じゃないといけないのか?などと思われる方も多いですが、いわゆる「クリエイティビティ」は備え付けていなければならないものではありません。デザインスプリントは、もともとデザイナーに着想を与えるためのプロセスではありません。逆に、普段ブレインストーミングや創造的思考に慣れていない、リサーチ、ビジネス、マーケティング、カスタマーサービスなど、デザイン以外のさまざまな領域の人々が自分の専門分野における知識を活用し、デザインスプリントというフレームワークを通じて、より良いアイデアを共創できるように設計されているのです。つまり、デザインスプリントではあらゆる分野の専門家を巻き込むことで、最善の解決策を引き出すことができるというわけです。「私はデザイナーではないので、革新的なアイデアは思い浮かばないかも知れません…」という言葉をクライアントからよく聞きますが、実際デザインスプリントは、あらゆる参加者が新しい方法で効率よく課題解決を目指すために設計されたプロセスなのです。

4. Decide by voting (投票で決定する)

デザインスプリントでは、各参加者の意見は平等に扱われますが、参加者全員が同時に納得した上でコンセンサスを形成する、または方向性をまとめる必要があります。そのため、参加メンバーが決定を下す必要がある場面では、少数の人が発言権を持ったり、上下関係が投票結果に影響を与えたりしないように、公正な評価に基づく投票で決定していきます。さらに、投票後に作成されたヒートマップは、全員の意見を視覚化することができるという利点があります。

5. Be open-minded (オープンマインドで):

デザインスプリントを始める前に、参加者にはオープンマインドになってもらうように促しましょう!ここでニューロマジックでいつも伝えている、重要な原則を紹介します。

  • 正しい答え」はない:自分のアイデアに自信がなかったとしても、そのアイデアが他のメンバーにインスピレーションを与えることもあります。また、限られた時間という制約のある中でアイデアを書き出すと、良いアイデアが生まれることもあるので、”正しい”アイデアを思いつこうと思う必要はありません。
  • 正しいことをしようとするより、とにかくやってみる:デザインスプリントの目的は、短時間でアイディエーションして、検証すること。そのため、完璧な正解を追求するのではなく、とにかくやってみることが重要です。プロジェクトを行なっていく中で、簡単には答えが見つからない問題に対面したら、まずはその問題をきちんと定義した上で、デザインスプリントで解決策の創出と検証を実践してみましょう!すぐには答えられない問題が出てくることもありますが、チームが最も重要な問題を見つけて定義し、最適な解決策とテストを実施するのにデザインスプリントが役立ちます。
  • 失敗も一種の成功:いわゆる「失敗」にがっかりする必要はありません。デザインスプリントの主な目的は仮説を検証することです。ですから、作成されたプロトタイプが予想通りユーザーに好まれなかったとしても、問題ありません!時間とリソースを大幅に節約したことになるため、ある意味大きな成功です。

6. Customizable (カスタマイズできる):

どんな状況でも、どんなチームでも通用するような、完璧なプロセスはありません。デザインスプリントの原則とメニュー組みのロジックが習得できていれば、プロセスの内容と方法は状況に応じて調整することができます。例えば、チームメンバーのユーザーに対する理解を深めるために、ペルソナを作成するエクササイズを加えたり、インパクト・エフォートマトリクスを使って実行優先度を決定したりすることもできます。柔軟に調整を加えることで、チームが適切なタイミングで、最もふさわしいメニューに取り組むことができます。

デザインスプリントの準備

デザインスプリントの効果を最大限にするためには、入念な準備が欠かせません!以下のことに注意しましょう。

  1. **ステークホルダーを把握する。**プロジェクトに関連する全てのステークホルダーが、デザインスプリントのゴールに関して共通認識を持っていることを確かめましょう。
  2. **繰り返し練習する。**リモートでデザインスプリントを実施する場合、参加者にはあらかじめスプリントで利用するソフトウェアのガイダンスを行いましょう。また、ファシリテーターはアクティビティの流れを確認しながら、問題が生じそうな箇所はないか、あるいは説明を特に丁寧にすべき部分はどこか、などを確認しておきましょう。
  3. **必要なものを用意しておく。**チェックリストを使って、デザインスプリントに必要なものが事前に揃っているか確認しましょう。

デザインスプリントのフォローアップ

デザインスプリントが終わった後、その効果を高めるにはどうしたらよいのでしょうか?Jake Knappが「スプリント」で言及しなかったポイント、それはスプリント後のフォローアップです。ここで、注意するべき3つのポイントを紹介します。

  1. **結果報告書を作成する。**スプリントに参加できなかったけれど、スプリントに関心を寄せている関係者に共有することができます。また、今後プロダクトやサービス開発を進める中で参照することもできます。
  2. **ユーザーテストのフィードバックを丁寧に確認する。**ユーザテストの結果は、とても貴重な情報です。プロダクトやサービス開発の微調整に役立てることも、直接開発や最適化のステップを踏むことも、さらにはアイデアを元に再検討を重ねることもできます。このようにして、ユーザーテストに基づいてチームが一緒になって話し合い、コンセンサスに達することが非常に重要です。
  3. **振り返りと反省を行う。**どのようにすればデザインスプリントを改善できるでしょうか?良かった点、困難、学んだことを振り返り、次に繋げましょう。

まとめ

デザインスプリントの優れている点は、構造化されたプロセスを通じて、チームがプロトタイプを作成し、短時間で検証できるという点です。

ただし、この記事では、チームメンバーがスプリント、競合製品分析、市場調査および研究を通じて解決したい問題を十分に理解していること、さらにはスプリントに参加していないメンバーでさえ、すべてデザインスプリントの有効性に影響を与える要因になるということが前提になっています。

デザインスプリントは、詳細までわたる調査、ユーザーへのインタビュー、問題の理解だけに留まらず、解決案の創出と検証に重きを置いています。チームが明確な課題をもって解決策を探しているとき、デザインスプリントで、さまざまな専門分野のメンバーと共創することで、効果を最大限に引き出すことができるのです!

近々にデザインスプリントの無料セミナーを開催しますので、ご興味がある方は是非ニュースレターにご登録をください!

Happy Sprinting!

この記事は、佐々木怜が中国語文を日本語に翻訳しています。

林 静瑩

アソシエイト・サービスデザイナー
台湾出身。2019年ニューロマジック入社。前職で培ったマーケティング領域での経験を活かし、現在はデザインスプリントのメニュー設計やファシリテーションを行う。中国語、英語、日本語を巧みに操るトリリンガル。

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