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ゼロ・キロメートル・レストラン:身近に味わうサステナビリティ

   

『ゼロ・キロメートル・レストラン』という言葉をご存じでしょうか?

サステナビリティ(持続可能性)やカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)削減への関心が高まるなか、ヨーロッパの料理や食事のシーンにおいて大きなインパクトを与えているコンセプトです。「素晴らしい食事の時間を創り出すこと」と「食材を可能な限り地元や近隣から調達すること」。その両方を大切にしている『ゼロ・キロメートル・レストラン』は人々の食生活を変えるだけではありません。「食品・環境・地域社会」と私たち消費者との関係に革命ともいえる変化をもたらしています。

今回はこの『ゼロ・キロメートル・レストラン』の美味しくて魅力的な世界へ皆さまをご案内します。

ゼロ・キロメートル・レストランの哲学

ゼロ・キロメートル・レストランというコンセプトはシンプルですが実に奥深いもの。「地元の食材、主にレストランから半径100km圏内から仕入れたものを提供すること」という考えがコンセプトの要です。このアプローチにより、食材輸送に伴う二酸化炭素排出量を大幅に削減し、食材の無駄を最小限に抑え、地元の農家や生産者を支援し、食事をする人々と食材供給源との間に強い結びつきが育まれています。

― ちなみに、半径100㎞と聞いて皆様はどう感じられましたか。東京駅を中心とした場合、北は栃木県宇都宮、東は千葉県銚子、南は千葉県の房総半島を超えて伊豆大島近くまで、西は山梨県甲府付近までが半径100kmの範囲となります。皆様のお住まいの地域からみた半径100㎞、一体どこまで広がるのか、一度調べてみると楽しいかもしれません ー

【東京駅からの半径100km圏内】

ゼロ・キロメートル・レストランの始まり

ゼロ・キロメートル・レストランという考え方は、近年大きな勢いを見せており、ヨーロッパをはじめ世界各地に広がり始めています。新しいコンセプトのようにも感じられますが、実は多くの地域で古くから文化的に深く根付いてきたものです。例えばイタリアでは「キロメートル・ゼロ」という言葉は何十年もの間スローフード運動と結びついており、地域の食の伝統を守り、環境を保護することの重要性を強調してきました。(日本にも地産地消、という素敵な概念がありますね!)

ゼロ・キロメートル・レストランのメリット

1. フレッシュで「口福」をもたらす料理

「地元から提供される」=「収穫後すぐに消費される」食材は、最も瑞々しく美味しいタイミングで食卓にのぼります。また、この「新鮮さ」は料理の味をランクアップさせるだけでなく、栄養価の高さにも影響を与えます。

2. 地域社会への支援

近隣の農家、漁師、職人から仕入れることで地域経済を活性化し、伝統的な食材の製造方法を将来に繋げていくことに貢献しています。ゼロ・キロメートル・レストランは食文化を「遺産」として保護することにも繋がっているのです。

3. カーボンフットプリントの削減

ゼロ・キロメートル・レストランがもたらす最も重要で意義深いメリットは「食品の長距離輸送に伴う温室効果ガス排出量の劇的な削減」です。地球の環境に対し、将来にわたって大規模なインパクトを与えると考えられます。

4. 透明性とトレーサビリティ

ゼロ・キロメートル・レストランはサプライヤーと密接な関係を維持することが多く、そのため、食品サプライ・チェーンの透明性とトレーサビリティを促進しています。食事を楽しむ際に、目の前の食べ物がどこから来て、どのように生産されたかを明確に知ることができます。

欧州におけるゼロ・キロメートル・レストランの成功例

1. オステリア・フランチェスカーナ(イタリア、モデナ)

osteriafrancescana.it

CC: City Foodsters

イタリアのモデナ中心部に位置する「オステリア・フランチェスカーナ」は、ヨーロッパにおけるゼロ・キロメートル・レストランの成功例のひとつです。先見の明のあるシェフ、マッシモ・ボットゥーラが率いるこのミシュラン三ツ星レストランは、地元食材へのこだわり(食材の多くをレストランからほんの数キロ圏内の近隣であるエミリア=ロマーニャ地方で調達)で知られ、世界的な評価を得ています。この取り組みは地域の味を認め、極上の料理として提案し、環境への影響を削減しながら持続可能性と地域の生産者を支援することにつながっています。サステイナビリティと高級レストランが共存できることを示し、料理界にムーブメントをおこしています。

2. ア・コジーニャ(ポルトガル、ギマランイス)

restauranteacozinha.pt

“自然、そして自然が与えてくれるものすべてが、私たちに真のインスピレーションを与えてくれる”こう語るのは ア・コジーニャの創設者でシェフも勤めるアントニオ・ラウレロ。ア・コジーニャは「美食」と「サステナビリティ」の双方において称賛を得ています。ミシュランの星獲得にとどまらず、サステナビリティへの貢献を国連に認められ、「ゼロ・ウェイスト・ビジネス(Zero Waste Business)」として正式に認定されています。(ZWIA=Zero Waste International Alliance)。

日本語で「台所」を意味する「ア・コジーニャ」は、伝統と革新を融合させながら、自然からインスピレーションを得た四季折々のポルトガル料理を発信しています。

ユネスコ世界遺産にも登録されている歴史的な街、ギマランイスに店を構えるア・コジーニャの空間は「サステナビリティと歴史」を念頭にデザインされています。歴史ある建築物の資材を再利用し、地元産の陶器を採用、再利用可能な布のナプキンを顧客に提供するという徹底ぶりです。

また、「ゼロ・ウェイスト・ポリシー(Zero Waste Policy)」=「廃棄物ゼロポリシー」に加え、「ニア・ゼロ・キロメーター・ポリシ(Near Zero Kilometer Policy)」にも注力しています。これは全ての食材が、可能な限り、よりレストランの近くから調達されるべきとする考えです。ア・コジーニャの場合、レストラン敷地内の菜園から新鮮なハーブが厨房に届けられ、地元生産者と親密な関係を築いています。サステナビリティを尊重するため、メニューは季節によって、時には1日ごとにで変わることもあります。地元で入手可能な食材の量や品質は日ごとに変化することが自然であり、レストラン側がそれに歩み寄って料理を提供しているからです。

3. ノッラ・レストラン(フィンランド、ヘルシンキ)

https://www.restaurantnolla.com/restaurant

“ノッラへようこそ-素晴らしい料理とサステナビリティが両立するレストラン”

ヘルシンキの「ノッラ」は「サステナビリティ」を核としたレストランです。店名の “Nolla “はフィンランド語で “ゼロ “を意味し、廃棄物ゼロに向けて注力していく気持ちが込められています。食材はすべて地元の農家、漁師、生産者から厳選して調達、フィンランドのオーガニックで新鮮な魚と野菜を堪能できるメニュー構成です。国外から調達しているのはオリーブオイルとワインのみ、と徹底しています。またスパイスやトウガラシはサステナブルな手段で調達できないため、料理にはほとんど使用されていません。生ゴミは堆肥化して土を作り、地元の生産者に還元して畑で使ってもらうサイクルを創り出しています。店内にはゴミ箱はなく、ガラスの食器、ナプキン、家具は再利用またはリサイクルされた素材で作られたもので整えられています。

4. L’Enclume – イギリス、カンブリア州

https://www.lenclume.co.uk/

CC: TruffUK

ピーターラビットの世界が広がるイギリスの湖水地方にあるカートメルという絵のように美しい村。 L’Enclumeはそこでの徹底した地元での食材調達で知られています。地域の自然の恵みを称え、伝統と革新を調和させた斬新な料理が特徴です。シェフ、サイモン・ローガンはほとんどの食材をレストランから1マイル以内(約1.6km)の距離にある自身の畑で育てており、自分たちの手で育てることにより、食材をより深く知り、向き合いながら調理することができる、という信念を持っています。食材を地元で調達することは環境への負担を削減するだけでなく、地域経済を支援し、責任ある農業の推進にも繋がります。環境と地域社会の両方に利益をもたらすサステナブルな料理は、土地に根ざした、その地域ならではの美食の体験として、ヨーロッパのレストラン業界において刺激的なモデルとなっています。

終わりに

ゼロ・キロメートル・レストランはもはやただのトレンドではありません。私たちの「食品、環境、地域社会」の捉え方を根本的にシフトさせる概念です。食材を可能な限り近隣から調達する、という哲学を尊重することで、ゼロ・キロメートル・レストランは「よりサステナブル、そして、よりクオリティの高い食事」というスタイルを創り出し、世の中に呈示しています。消費者が自分たちの選択に意識的になっている現代、ゼロ・キロメートル・レストランの食卓は食の喜びのみならず、サステナブルな未来へ続く一歩でもあります。外食に出かける際には、ゼロ・キロメートル・レストランを訪れて、地域料理のフレッシュさとそのパワーを自身の肌と舌で感じてみてはいかがでしょうか。