卵の殻が花火に? これからのサステナブルな花火の楽しみ方

卵の殻が花火に?これからのサステナブルな花火の楽しみ方

夏の夜空に美しく咲く花火。それを見上げる瞬間、夏の訪れを深く感じるのではないでしょうか。しかし、その美しい煌めきの裏に、失われつつある伝統や健康に関わる課題が隠されていることをご存知でしょうか。

本記事では、花火が抱える環境や健康への課題を整理するとともに、それらに対応する国内外のサステナブルなソリューションをご紹介します。

いま私たちが知っておきたいこと。

日本の夏に欠かせない花火。美しい光で多くの人を魅了する一方、騒音や環境負荷など、これまであまり注目されてこなかった課題も指摘されています。

・「音のストレス」問題

アメリカ聴覚学会は、花火の音は至近距離で瞬間的に150~175 dBに達することがあると指摘しています(参照元:American Academiy of Audiology)。数字だけでは少しイメージしづらいかもしれませんが、175 dBは、ロケット打ち上げ時(約180 dB)に近い非常に大きな音圧レベルです。実際にオランダでは、20~75歳のオランダ人約2,000人を対象に実施した調査によると、花火を見に行った成人の6%が耳鳴りや難聴、耳が詰まったような感覚、音のゆがみなど、何らかの聴覚障害を経験したと回答しました(参照元:VeiligheidNL)。また、この音のストレスは、私たち以上に、周りの動物や大切なペットにも大きな負荷とストレスがかかります。この問題の対策として、実際にオランダでは、2026年から本格的に一般市民への打ち上げ花火などの販売を禁止する動きも始まっています(参照元:AnimaNaturalis)。

・遊んだあとに残る、プラスチック過剰包装の実態

夏になるとお店でよく目にする、たくさんのおもちゃ花火が詰まったバラエティパック。楽しい時間が終わったあと、細かな包装を分別する手間に小さなストレスを感じたことはありませんか。現在日本で流通しているおもちゃ花火の多くは、プラスチックで過剰に包装されています。これらは分別が難しく、そのまま一括廃棄されてプラスチック問題に繋がったり、海辺や公園に放置されて環境に負荷をかけたりしているのが実態です。近年ではこうした問題に対し、国内の大手花火メーカーなどが「オール紙製パッケージ」を開発するなどの脱プラスチックへの動きも始まっています。

未来の夜空を創造する、優しい選択肢

課題があるからといって、古くから大切にされてきた花火を楽しむ文化を、ただやめるという選択は少し寂しいものです。未来の世代へと繋ぐためにできることはなんでしょうか? 

・卵の殻を使った花火

大正15年(昭和元年)に創業した静岡県の「井上玩具煙火株式会社」の「たまRe:(たまり)」は、卵の殻をアップサイクルした花火です。卵の殻は地元の寿司店やスーパーから回収したものを活用。これまで廃棄されていた資源を新たな価値へと生まれ変わらせたいという思いから、何度も試作を重ね、卵殻を配合した手持ち花火「たまRe:」が誕生したそうです。

また、ただ環境に優しいだけでなく、光や音が工夫されているのも「たまRe:」の大きな魅力です。卵殻にチタンを組み合わせることで、オレンジ色の光とパチパチという音を楽しめる花火や、アルミニウムを組み合わせることで、流れ星のようなきらめきを演出する花火など、異なる表現を楽しめます。

・優しい天然素材から生まれた花火

日本に数社しか残っていない「国産線香花火」の伝統を受け継ぎ、守り続けているのが、福岡県の老舗「筒井時正玩具花火製造所」です。そのなかでも線香花火「花一片(はなひとひら)」は、一つひとつ丁寧な手作業で製造しています。また、こだわりのある材料を使っており、30年以上寝かせた宮崎県産の松の根っこから生まれた松煙や、福岡県・八女産の手すき和紙などを使い、美しく、表情が変わる花火を作り出しています。

・最新技術を駆使した、煙を出さない「ドローンショー」

花火が抱える環境負荷や安全性への課題を背景に、世界では従来の花火に代わる、あるいは組み合わせる新たな演出方法も広がりつつあります。その一つが、数千台のドローンを用いて夜空に光の演出を描く「ドローンショー」です。
ドローンショーは火薬を使用せず、花火のような煙や燃焼による粒子を発生させません。また、花火よりも音が小さいため、騒音の軽減につながると期待されています。さらに、機体は充電して繰り返し使用できることから、持続可能性の観点でも注目を集めています。

・「プロジェクションマッピング」

コロナ禍によって伝統的な夏祭りや花火大会の中止が相次ぐなか、その代替となる新たな光の演出が日本でも行われました。静岡県の「遠州ふくろいの花火」が新型コロナウイルスの影響で2020年から3年連続の中止となるなか、2023年4月に地元の袋井高校パソコン部の生徒たちが法多山尊永寺の本殿をスクリーンに見立て、「袋井の四季」をテーマにしたプロジェクションマッピングを企画・制作しました。光と音を組み合わせた演出は、花火大会に代わる地域イベントとして開催され、高校生による地域活性化の取り組みとして注目を集めました(参照元:SBS News)。

・YOKOHAMA GO GREEN

花火大会では環境負荷の低減も重要なテーマとなるなか、お祭りを楽しみつつ別の観点からCO2を削減する、横浜市の脱炭素施策「YOKOHAMA GO GREEN」も注目されています。

2025年に金沢区で行われた花火大会では、「ごみ分別チャレンジ」が行われました。分別の際のゴミ箱はイラストと色のセットで分かりやすくした結果、分別精度が向上し、日中の燃やすごみの分別率が85%と、一般ステーションと比較し、19ポイント高くなり、プラスチックごみの分別率は、一般ステーションより30ポイント高い58%となりました。こうしてリサイクル可能なごみが正しく分別された結果をCO2排出量に換算すると約37%の削減に相当します(参照元:YOKOHAMA GO GREEN)。

最後に

花火は夏の風物詩である一方、大気汚染や騒音、野生動物やペットへの影響、ごみの排出など、さまざまな環境課題が指摘されています。

では、これからの夏、まず個人レベルで私たちにできることは何でしょうか。最も身近なアクションとして、花火を楽しむときに周囲やペットへ配慮し、適切な距離をとることも優しさのアクションとなります。また、イベント会場などで日頃のごみ分別をほんの少し意識することもできます。時には卵の殻を蘇らせたサステナブルな手持ち花火を選んだり、「量よりも質」を重視した、職人の想いが詰まった「優しい花火」に目を向けたりしてみるのも素敵な選択です。今年の夏は大切な人と、手元の穏やかで優しい光にそっと目を凝らす。そんな、心温まる夏を過ごしてみませんか。