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ナフサは本当に「いつでも買える」のか。崩れているのは、価格ではなく「前提」?

最近、ナフサをめぐる議論が、これまでとは少し異なる文脈で語られる場面が増えてきているように感じます。ナフサは、プラスチックや合成繊維、塗料、接着剤など、幅広い製品の原料となる石油由来の素材です。多くの企業にとっては、日常的に調達される「前提」の一つとして扱われてきた存在とも言えるかもしれません。

ただ、その前提は本当に安定したものとして捉え続けてよいのでしょうか。

最近の国際情勢、とりわけイランをめぐる緊張の高まりを背景に、ホルムズ海峡の通航リスクや制裁強化の可能性が、現実的なシナリオとして議論される局面が増えています。こうした状況が長期化した場合、原油価格だけでなく、石油化学原料の供給そのものに影響が及ぶ可能性も指摘されています。

ナフサは、まさにその影響を受けやすい位置にある原料の一つです。この原料が揺らぐとき、その影響は特定の業界にとどまらず、広範なサプライチェーンに波及する可能性があります。

「価格の問題」ではなく「前提の問題」として捉えられるか

ナフサに関するリスクは、これまで主に価格変動の文脈で語られてきました。実際、原油価格の変動に伴うコスト増減は、多くの企業にとって日常的に管理されているテーマでもあります。

一方で、「価格は変動しても、必要な量は調達できる」という前提が、暗黙のうちに共有されてきた側面はないでしょうか。調達計画や原価構造、取引先との価格交渉の仕組みなどを見ていくと、この前提の上に成立している部分も少なくないように見受けられます。

しかし、今回のように供給そのものの不確実性が現実的なリスクとして浮上する局面では、この前提自体を見直す必要性が出てきているとも考えられます。「価格が変わるリスク」と「供給が揺らぐリスク」は、企業の対応のあり方を大きく変えうるものです。

地政学リスクが示唆する構造的な不安定さ

中東情勢は、短期的な変動というよりも、構造的な不安定さを内包していると捉えられることが多い領域です。宗教、民族、エネルギー資源、そして大国間の力学が複雑に絡み合う中で、状況の変化を正確に予測することは容易ではありません。

ホルムズ海峡は、世界の原油輸送の約2割が通過する戦略的要衝とされています。この海域の通航リスクが現実的なものとして語られるとき、原油だけでなく、ナフサや液化天然ガスといったエネルギー・原料の供給にも影響が及ぶ可能性があります。

こうした状況は、「安定して入手できる」という前提そのものが、外部環境に強く依存していることを改めて浮き彫りにしているとも言えるかもしれません。

なぜこれはサステナビリティの論点になりうるのか

多くの企業が、脱炭素に向けた取り組みを進めています。Scope1・2の削減に加え、Scope3の把握やサプライチェーン全体の可視化といった取り組みも広がりつつあります。

ただ、その一方で、事業の基盤となる原料が化石燃料由来のナフサに依存している場合、その構造をどのように位置づけるべきかという問いも浮かび上がってきます。Scope3の排出の多くが原料起点で発生すると言われる中で、この依存構造は環境負荷の観点だけでなく、供給の安定性という観点からも再検討の余地があるかもしれません。

さらに、今回のような地政学リスクは、環境・社会・経済の要素が複合的に絡み合う形で顕在化します。その意味で、ナフサの問題は単なる資源調達の話ではなく、「事業の前提が将来にわたって成立し続けるのか」というサステナビリティの本質的な問いに接続しているとも考えられます。

見過ごされがちな論点

現場での議論を見ていると、いくつか共通する傾向が見られるように感じます。

一つは、原料の代替可能性が十分に検討されていない点です。バイオマス由来原料や再生素材への転換はしばしば中長期のテーマとして扱われますが、検討の開始が遅れるほど、選択肢が限定されていく可能性もあります。

二つ目は、リスクが価格の問題として扱われがちな点です。コスト管理の枠組みの中では、「そもそもこの原料に依存し続けるべきか」という問いには接続しにくい傾向があります。

三つ目は、ESGと調達戦略の間にギャップが生じている点です。開示上はサプライチェーンリスクが整理されていても、それが実際の調達判断や投資判断に十分に反映されているとは限らないケースも見受けられます。

求められる視点の変化

こうした状況の中で、いくつかの視点が重要になってくる可能性があります。

一つは、原料や素材の選択を含めた戦略設計です。サプライチェーンの可視化は出発点に過ぎず、「見えたリスクにどう向き合うか」という意思決定までつなげていくことが求められる場面が増えていくかもしれません。

もう一つは、リスクを開示のための情報としてではなく、経営判断に活用していく姿勢です。整理されたリスクが調達方針や投資判断に反映されることで、結果として企業のレジリエンス向上にもつながっていく可能性があります。

地政学リスクそのものを正確に予測することは難しい一方で、それに対してどのような構造で備えるかは、今から設計することができる領域でもあります。

実務と開示をつなぐためにできること

特に、サステナビリティ部門と調達・製造部門の間に認識のギャップがある場合、その間をつなぐ「共通言語」と「構造」を整えることが重要になるかもしれません。

特に、開示対応と日々の意思決定が分断されないように設計する点を重視しています。

いま改めて問い直すという選択

ナフサの問題は、単なる原料価格の話にとどまらない側面を持ち始めているようにも見えます。それは、自社の事業がどのような前提の上に成立しているのかを見直すきっかけになりうるものです。

サステナビリティを、環境負荷の低減だけでなく、「事業の前提が将来にわたって成立し続けるか」を問う視点として捉えるのであれば、今回のような外部環境の変化は、その検討を深める契機ともなり得ます。

今の原料構造は、10年後にも同じように説明できるでしょうか。
その前提は、これからも通用し続けるのでしょうか。

構造を捉え直すための入り口として

もし、自社のサプライチェーンや原料構造について整理を進める中で、「どこから見直せばよいのか分からない」と感じられる場合もあるかもしれません。                                          

二ューロマジックでは、現状の構造把握からリスクの可視化、意思決定につながる設計まで、テーマやフェーズに応じた形で伴走しています。

まずは現状を整理するところからでも問題ありません。お気軽にご相談ください。

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